廃棄物はいまや「宝の山」だ 日本は「資源小国」から「資源大国」へ...加速するサーキュラー・エコノミーの現在地/経済産業省・田中将吾さん

提供:RX Japan

   2021年の東京オリンピックで使われた5000個のメダルは、使用済みの携帯電話などから回収された金・銀・銅が利用され話題になったことは記憶に新しい。

   このニュースとともに紹介されたのが「サーキュラー・エコノミー」(循環経済)だ。

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   それは、長年続けてきた「大量生産→大量消費→大量廃棄」という一方通行の「リニアエコノミー(線型経済)」とは対照的に、天然資源を循環させて活用する経済の形だ。実はこれが新たなビジネスチャンスを生むきっかけになりつつある。

   今回、2025年2月19日(水)、20日(木)、21日(金)に実施される「サーキュラー・エコノミーEXPO」の基調講演に登壇し、サーキュラー・エコノミーの最先端の実情に最も詳しい、経済産業省 GXグループ 資源循環経済課長の田中将吾さんに話を聞いた。サーキュラー・エコノミーの現在地とこれからとは――。

  • 田中将吾さん(経済産業省 GXグループ 資源循環経済課長)
    田中将吾さん(経済産業省 GXグループ 資源循環経済課長)
  • 田中将吾さん(経済産業省 GXグループ 資源循環経済課長)

「新しい資源産業の創造」に限りなく近い大プロジェクト

――まず、サーキュラー・エコノミーとは何かをご説明いただけますか?

田中将吾さん これまでは、「3R」(リユース、リデュース、リサイクル)を行うことによって、国内の廃棄物の量や最終処分量、埋め立て量を減らす政策が中心でした。それに対しサーキュラー・エコノミーは、天然資源の利用を最小限に抑えることを目指します。

たとえば、東京オリンピックのメダルを廃棄した携帯電話からつくったように、家庭や企業・工場などにあるさまざまな廃棄物を回収し、資源化して、もう一度命を吹き込んで新たな物をつくる。そうして資源を可能な限り何度も循環させていく。究極は、廃棄物がほぼ存在しないという状態がゴールであると言えます。
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――どれだけのポテンシャルを秘めているのですか?

田中さん 日本国内にある、たとえば金属資源だけでも、世界の金鉱山に匹敵するぐらいの量があると言われます。金属資源だけでなく、廃プラスチックなども立派な資源になりえます。そう考えていくと、いまは燃やされたり捨てられたりしている廃棄物はゴミではなく「宝の山」なんですね。

いまはそれらを必ずしも使い尽くせていませんが、低コストで高品質に資源化できるサイクルをつくることで、GDP(国内総生産)を稼げるはずなのです。

そうすることで「資源小国」のわが国が、「資源大国」に大転換することも夢ではありません。つまり、「新しい資源産業の創造」に限りなく近い大プロジェクトになるのです。

――いまなぜ、サーキュラー・エコノミーなのでしょうか?

田中さん 2つの背景があります。

1つ目は地政学的なリスクです。日本は資源のほとんどを海外に依存しており、なおかつ輸入する資源は特定地域に偏っていますので、どこかで何かが起こるとたちまち輸入が滞ってしまいます。

ここ数年でも、地域紛争や新型コロナウイルスの蔓延などによって、資源が入らなかったり、入りにくくなったりして経済活動に支障を来し、市民生活にも不便が生じました。

さらに地政学的な争いに巻き込まれて、輸出しないことが外交カードに使われる経験も私たちはしてきました。そうした観点から、自衛手段として国内にある資源を循環させて活用していくことが求められるのです。

――もう1つは?

田中さん 2つ目は環境問題です。国内で排出されるCO2の3分の1は、素材産業から排出されています。また、石油だけでなく金属も含めた天然資源を採ることもかなりの環境負荷となっている。これまで「脱炭素・脱炭素経営」を進めてきたわけですが、それだけでは十分ではないことがわかってきました。

その切り札になるのがサーキュラー・エコノミーの確立です。
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――今後ものをつくるときには、資源循環を念頭に置いて素材や製品設計を考える、というように発想を転換していく必要がありますね。

田中さん グローバルブランドなどはそうしたアクションが起きています。すでにApple社は、自社工場で製品を解体し、部品や金属を回収して再度製造工程につなげることを、ロボティックスを活用してオートメーション化しています。

このような廃棄物を再度リカバリーして使えるようにする経済循環をつくる動きは加速し、それにともない新しいビジネスが生まれてくるでしょうね。
田中将吾さん(経済産業省 GXグループ 資源循環経済課長)
田中将吾さん(経済産業省 GXグループ 資源循環経済課長)

――ビジネスを展開するにあたり、どんなプレーヤー(業界、企業)が考えられますか。

田中さん これまでは廃棄物処理のサービスで雇用が生まれていましたが、これからは廃棄物から資源を取り出し、取り出した資源を使う企業などが、新たなサプライチェーンを形成することになるでしょう。

たとえば、スマートフォンのバッテリーとして私たちにも身近な、リチウムイオン電池をリサイクルする場合、微細なブラックマスという粉体を再利用しています。その際、ブラックマスを精製するためのプラントや、プラントエンジニアリング技術が必要になります。

そう考えると今後は、斬新なアイデアやノウハウ、技術を有するスタートアップなど、誰もが参入できるビジネスチャンスがあります。いま私たちが関わっている業界を見渡しても、関係がない業界はないぐらい、ほとんどの業界が関心をもっています。

――経産省としては、どんな資源循環経済政策を進めていますか?

田中さん まず法的根拠などを踏まえたルールづくり、そして業界への支援――それを両輪で行います。とくに回収してリサイクルし、製品化するというサイクルの中でステークホルダーも関わってくるので、そこのコーディネートもしていきたいと考えています。
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