「家オペ」でたくさんの能力が磨かれている
――ということは、家オペレーションに慣れている女性にとっても仕事に応用できるわけですね。
川上敬太郎さん そのとおりです。さまざまなタイプのママ友たちと上手くやりとりするコミュニケーション力や、毎日の献立を考える企画力、平日も休日もなく家族の食事を作り続ける実行力など、家オペを通じてたくさんの能力が磨かれています。
私はそれらを「家オペ力」と呼んでいます。家オペ力が磨かれることによって、知らず知らずのうちに培われているコミュニケーション力や実行力などは、その人自身の中に素養として備わるソフトスキルとして仕事にも活かされる能力です。
職務から離れれば、その職務の経験に限ってはブランクが生じるかもしれませんが、家事でも育児でも、あらゆる家オペ経験を通じて何らかのソフトスキルが磨かれており、それが成長機会となっています。
企業の採用担当者が「この求職者はブランクが長いからダメだ」などと、その期間に培われた能力を評価しようともせずに不合格にするとしたら、とてももったいないことです。人生には、ブランクなどありません。
――今回の調査で、特に強調しておきたいことはありますか。
川上敬太郎さん 夫が家事育児を頑張っている一方、決して仕事自体が楽になっているわけではありません。つまり、夫は仕事を目いっぱい頑張ったうえで、さらに家事や育児などの工数がそこに上乗せされていることになります。その点においては、仕事だけに専念できた時代の夫より今どきの夫のほうが大変なのではないでしょうか。
一方、妻はそもそも家事や育児などを目いっぱいやってきたなかで、家計補助のために兼業主婦として働き、仕事工数を上乗せして負ってきました。家事育児をするほど負荷が増えたと感じる夫は多いかもしれませんが、多くの妻は、すでにそれ以上の負荷をずっと負い続けてきていたということです。
共働き世帯が増えて主流になるなか、妻が仕事する工数が増えるほど、それがステルス負担となって、いつの間にか家庭運営全体にかかる工数を大きくしてきました。いま夫に上乗せされている家事・育児の負担の多くは、もともと妻が一人で負ってきた負担をシェアするなかで生じてきているものです。
――夫が、妻が立ってきた場所に一緒に立つようになってきたわけですね。
川上敬太郎さん 夫婦が共に家事や育児、介護などと仕事を両立させるようになっていけば、お互いの大変さを実感として理解しやすくなっていく面もあるかと思います。
そして、夫婦がお互いを労わり、尊重し、協力して家庭運営することの重要性はますます高まっていくことになるのではないでしょうか。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)