毎年3月になると、JRを中心に多くの鉄道会社でダイヤ改正を実施する。関東圏では、JRや私鉄、地下鉄の相互乗り入れがよく見られるため、日にちをあわせて改正することになっている。
前回2024年3月のダイヤ改正では、「改悪」と見られるような状況があった。JR東日本京葉線では、快速の運転時間帯変更や通勤快速・快速の本数削減があり、地元からは大きな反発があった。JR東日本は再度ダイヤを変更して改正にのぞみ、また9月には京葉線のみの再改正を実施した。
その意味では、列車ダイヤは使いやすいようになっているかが問われているのが、この3月のダイヤ改正である。
京葉線「快速問題」はどうなる
京葉線では、東京~蘇我の間を走る夕夜間帯の下り各駅停車(平日2本・土休日1本)を快速列車に変更し、所要時間を短縮する。また、朝時間帯や夕夜間帯に運転している一部快速列車で運転時間を変更し、所要時間を短縮する。
また、海浜幕張~西船橋間の列車を増発する。
各駅停車を快速にしたり、西船橋方面とのアクセスをよくしたりするなど、利便性を向上させる形になる。
とくに快速列車は、比較的遠いところからの通勤客が利用しているため、求められているサービスを供給するようになった。しかし、以前ほど多くの快速や通勤快速を通勤時間帯に走らせるというものではないため、若干の改善といえる。
京葉線沿線の鉄道利用者が減っているという課題はあるものの、少しでも以前のようなダイヤに近づける必要があった。
期待の中央線グリーン車
中央線方面では、中央線快速・青梅線でグリーン車サービスを開始することで注目が集まっている。既存の10両編成に2両のグリーン車を加えて12両になるため、普通車の輸送力は変わらない。比較的余裕のある層がグリーン車に移行し、そうではない人が普通車を利用するようになるため、普通車の車内空間に余裕が生まれる。
中央線は混雑が激しい路線であるため、グリーン車2両の増結は普通車利用者にとってもいい。
ただし、帰宅時の「はちおうじ」「おうめ」といった着席サービスを提供するための特急が廃止されてしまうので、それはサービスダウンといえる。
ちなみに、朝ラッシュピーク時前に都心に着く「はちおうじ」のダイヤを甲府まで引っ張ってきて、「かいじ」にしたことはプラスである。
本数増は実現せず
「使いやすさ」という点では、混雑路線で増発を実施することは評価できる。山手線では、朝ラッシュ時に内回り・外回りで各3本、夕ラッシュ時にはそれぞれ各2本である。だが、日中の混雑が多くの利用者に不満を抱かせている状況は改善されず、日中の列車本数に変更はない。
ワンマン運転が開始となる南武線では、平日の夕時間帯に立川発上り列車を2本、稲城長沼からの下り列車を2本増発する。南武線は混雑の激しい路線なので、これは朗報である。なお、ホームドアの整備により、転落事故などが減ることになるので、ダイヤの正確性は増す。
地下鉄や私鉄でもダイヤ改正が行われる。東京メトロ千代田線では、夕方の代々木上原方面からの綾瀬行きを北綾瀬行きに変更し、利便性を向上する。
小田急電鉄では、平日夕方の東京メトロ千代田線から直通する「準急」5本を、「急行」に種別変更する。また、平日・土休日日中に多摩線唐木田から東京メトロ千代田線に直通する急行(千代田線内は各駅停車)を設ける。現在は向ヶ丘遊園から千代田線に急行が直通しているが、以前のような「多摩急行」が実質的に復活する。なお、多摩線内は各駅に停車するため、乗り換えの不便さがなくなる。
東武鉄道の東上線では日中の急行列車が1時間当たり4本から6本に増加し、東上線の速達性を高める。
これらの外に見えるダイヤ改正のために、見えない部分で首都圏の鉄道事業者は細かい調整をしている。
この3月のダイヤ改正では、「思い切った」というよりは、細かな修正が中心になっている。だが、コロナ禍を経て人が鉄道に戻ってきているのに、本数増を実施しないというのは、乗客にとってデメリットである。2026年春のダイヤ改正ではそのデメリットを解消していただきたい。(小林拓矢)
筆者プロフィール
こばやし・たくや/1979年山梨県甲府市生まれ。鉄道などを中心にフリーライターとして執筆活動を行っている。著書『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)、『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。