2025年4月13日に開幕する大阪・関西万博では、大坂城再建に使う目的で切り出されたが使われなかった「残念石」と呼ばれる石を、柱に使ったトイレもお目見えする。
残念石の活用をめぐっては、元々の場所から動かすことや、トイレの柱という用途について批判的な声もあがった。24年12月20日に行われた報道公開では、設計者のひとりが(1)傷つけないように養生して運んでいる(2)会期終了後は元の場所に戻す、などと説明。現状を説明することで、理解は進んでいるとの見方を示した。
「400年の間にかなりの回数動かされていた経緯がある」
万博では、20ほどの建築物のデザインを40歳未満の建築家を対象にコンペで募集した経緯がある。選考を経て建設が進んでいるひとつが、今回の「トイレ2」と呼ばれる残念石を活用したトイレだ。提案したコンセプトは「いのちを持つ庭」。取材に応じた設計者のひとり、竹村優里佳氏によると、石自体を命としてとらえた上で「建築自体が命を持っているのではないか」という着想から提案したという。コンペに採択されてからも「結構敷地が変わったり用途が変わったり」と、紆余曲折もあったようだ。
残念石は近畿地方の各地に点在しており、木津川の支流、赤田川の河川敷(京都府木津川市加茂町)にあるものを万博向けに借りることになった。1975年に護岸工事を行っていたところ、多数の巨石が見つかり、大坂城再建のために切り出されたことが判明。そのまま堤防として機能しているものや、展示用として移動されたものもあり、11個が河川敷に置かれた。竹村氏によると「400年の間にかなりの回数動かされていた経緯がある」という。この11個のうち5個が、24年5月に万博会場に向けて運び出された。高さは2.5メートルから3メートル、重さは7~13トン程度。表面には、石を切り出す際に開けられた「矢穴」や、寸法などを記した「刻印」の跡が残っている。竹村氏は
「石自体が持つ自然の迫力のある力と、『400年前の人々が確かに切り出した』という人間の力、そうしたものを実際万博に来て、皆さんの五感で感じとっていただければ」
などとアピールした。