「生え抜き主義」では新規事業のネタに詰まる
前述の調査で、アルムナイネットワークを自社で構築している回答者に取り組み内容を尋ねたところ、「OB会の開催」「社内報を退職者にも送る」「メールなどで定期的に情報提供」「同窓会を会社設備で不定期開催」といった回答があったという。
Aさんは「これでは定年退職者への取り組みと変わらない」とし、現役ビジネスパーソンのアルムナイをネットワーク化する意味を理解しているとはいえない、と苦言を呈する。
「会社のコストをかけるわけですから、目的を明確にすべきです。まず考えられるのは『再雇用』を想定した取り組みで、アルムナイに求人情報を先行開示して募集をかけるとか、アルムナイのスキルや経験を登録してもらってスカウトをかけるとか。採用の成果目標を設定してもいいし、実際に取り組んでいる会社もあります」
前述の調査では、自社に退職者の再雇用制度があるかと尋ねたところ「制度があり、再雇用の実績がある」と答えた人は32.8%で、「再雇用制度はない」が64.7%、「制度はあるが再雇用の実績はない」が2.6%だった。
Aさんによると、外資系企業では再雇用を意識した取り組みのほか、重要業務の業務委託案件を開示し、フリーランスや副業として発注することもあるそうだ。
「業務委託から再雇用に発展したり、副業から起業につながって業務提携に至ったり、といったことが普通に行われています。新規事業の開発をどう進めるか悩む日本企業は多いですが、普段からアルムナイとのやり取りをしていれば、ネタに詰まることはなかったでしょう。『終身雇用』『生え抜き主義』が、現状を招いたともいえます」