大阪・関西万博では、参加国が独自のデザインで建てる「タイプA」の最後のパビリオンの着工が2024年12月上旬までずれ込み、25年4月13日の開幕に間に合うか危ぶまれている。そんな中でも、工事が比較的順調で「完成時期について何も心配をしていない」のがオランダパビリオンで、24年12月20日には外観が報道陣に公開された。
テーマは「コモングラウンドでの新たな幕開け」(A New Dawn on Common Ground)。オランダパビリオンでは、「コモングラウンド」を日本語で「共創の礎」と説明、「共に分かち合い、共に新しい価値を生み出すこと」を指すとしている。取材に応じた万博のオランダ政府代表を務めるマーク・カウパース在大阪オランダ総領事によると、「オランダ人は、常識にとらわれないイノベーティブな方法で、問題解決のための道を探ることでよく知られている」。パビリオンでは、気候変動やパンデミック(感染爆発)といった、1つの国だけの力では解決できないような問題に向き合うための「新たなコラボレーションを生み出す、開かれた空間」が展開されるとしている。
直方体の建物に直径11メートルの球体はめ込んだような構造
パビリオンは、直方体の建物に球体をはめ込んだような構造だ。球体は「man made sun-次世代への太陽」と名付けられ、再生可能エネルギーと日の出を表現。直径は11メートルで、1970年の大阪万博のシンボル「太陽の塔」に3つある顔のうち、未来を表す「黄金の顔」の高さと、ほぼ同じだ。万博のオランダ政府代表を務めるマーク・カウパース在大阪オランダ総領事は、
「1970年の万博とのつながりも感じていただけるのでは」
などと話した。外壁には、水をイメージした曲線をあしらった。
パビリオンに入ると「エネルギーオーブ」と呼ばれる球体を渡され、インタラクティブ(双方向的)な体験を交えながら、「エネルギー転換を実現する旅」に没入できるとしている。野菜料理などが提供されるカフェも併設予定だ。
会期終了後、解体して再度組み立てることができる「循環型」パビリオンだという点も特徴だ。
出島での日蘭コラボレーションは「コモングラウンド」の精神を象徴
日蘭の交流は、1600年にオランダ船のデ・リーフデ号が大分・臼杵沖に漂着したことで始まったとされ、万博が開催される2025年は「日蘭交流425年」にあたる。カウパース氏は、両国交流の歴史と万博の関係にも言及した。
鎖国が続いていた江戸時代でも、オランダは長崎・出島を「西洋への唯一の窓口」として交易を許されていた。蘭学を通じて西洋の医療技術などが日本にもたらされたことを挙げながら、
「この出島という人工島での日蘭のコラボレーションは、オランダの『コモングラウンド』の精神をよく象徴している。出島という人工島でのコラボレーションから、(万博会場がある)夢洲という新たな人工島での万博というコラボレーションにつながっていることを感じられるのではないか」
などと話した。
(J-CASTニュース編集委員 兼 副編集長 工藤博司)