「経営のプロ」コンサル会社、過去最多の倒産 調査担当者が明かす「勘違いコンサル」の実態

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   コンサルタント業界といえば「経営のプロ」が集い、また成長が著しいため就活生の人気が一番高いところだ。

   そのコンサル業界で倒産が急増、過去最多に達していることが、東京商工リサーチが2025年1月10日に発表した調査「『経営のプロ』コンサルの倒産が過去最多」でわかった。

   企業を経営悪化から救うはずのコンサル会社が、バタバタと倒産してどうする? 調査担当者に聞くと、コンサル業界の意外な実態が――。

  • 収益を上げる方法を指南する経営コンサルだが…(写真はイメージ)
    収益を上げる方法を指南する経営コンサルだが…(写真はイメージ)
  • (図表)経営コンサル業の倒産件数の年次推移(東京商工リサーチ作成)
    (図表)経営コンサル業の倒産件数の年次推移(東京商工リサーチ作成)
  • 収益を上げる方法を指南する経営コンサルだが…(写真はイメージ)
  • (図表)経営コンサル業の倒産件数の年次推移(東京商工リサーチ作成)

異業種から続々参入、玉石混交で淘汰が激しい時代に

   東京商工リサーチの調査によると、2024年の「経営コンサルタント業」の倒産が154件(前年比7.6%増)に達した。年間最多だった2023年の143件を上回り、過去最多を更新した【図表】。

   コンサル業界はたった1人でも少ない開業資金で始められ、参入障壁が非常に低い。だが、参入が簡単な分、コロナ禍を経て改めて実績や特色が重視され、玉石混交の業界では淘汰が加速している。

   「経営のプロ」とみられるコンサルタントも、戦略系、士業などの専門系、政策系など業務や業種により多様化し、最近はDX支援やM&A支援、自治体からの補助金申請のアドバイスなど多岐に広がっている。顧客のニーズが高度化しているなかで専門性が求められる時代に入り、経営環境の変化に対応するのは難しいためだ。

   資本金別では、1億円未満の中小企業が152件(構成比98.7%)とほぼ全てを占めた。さらに、従業員数別でも5人以下の小規模事業者が143件(同92.8%)を占めた。異業種からの新規参入が相次ぐ一方、資産背景に乏しい中小コンサルタントが売上不振にあえぐ実態が浮かび上がる。

   東京商工リサーチは、こう分析している。

「経営コンサルの業績は、コンサルタント自身の経験や人柄、人脈などにも大きく左右される。属人的な性質が強い分、いかに優秀な人材を確保し、顧客に価値を提供できるかが問われる。今後は、苛烈な生き残り競争がさらに進み、実績と特色を打ち出せないコンサル企業は淘汰される可能性が高い」

無資格でもOK、スマホ1台で開業する脱サラ組が多い

   J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を担当した東京商工リサーチ情報部の櫻井浩樹(さくらい・ひろき)さんに話を聞いた。

――「経営のプロ」であるコンサル業界で倒産が過去最多とは、ブラックユーモアのような事態ですが、経営が苦しい中小企業から見たら笑えない話です。ズバリ、一番大きな理由は何でしょうか。

櫻井浩樹さん コンサルタント業界は成長業界ですが、参入障壁が低く、競争が激しい業界でもあります。販売不振や既往のしわ寄せなどを含む「不況型倒産」が全体の66.2%を占め、事業上の失敗も15.5%に達します。

会社を設立したのはよいが、販売不振や赤字などで思うような業績が上げられなかったことが一番大きいと思います。

――参入のハードルが低いといっても最低限、中小企業診断くらいの資格は必要なのではないですか。極端な場合、自宅を事務所にしてスマホ1台あれば開業できる、つまり脱サラ組が多いということでしょうか。

櫻井浩樹さん そのとおりです。コンサルタントを名乗るのに特別な資格は必要ありません。他業種と異なり1人でも開業でき、脱サラ組も参入しやすい業界です。

ただし、参入が容易な分、人とのつながりや紹介に頼り、実績や特色を打ち出せないと生き残りは厳しいでしょう。また、脱サラの場合、人脈つながりで最初は受注があっても、実績や結果次第で顧客は離れますので、シビアな世界であることは間違いありません。

また、今回調査は負債総額1000万円以上の企業倒産が集計対象で、負債1000万円未満の倒産、それと廃業は集計に含んでいません。つまり、脱サラ組の休廃業まで集計に含むと、今回の数字以上になるのは間違いありません。

「戦略系」「政策系」「士業などの専門系」に多様化

――なるほど。大変厳しい業界ですね。リポートにはコンサル会社は、「戦略系」「政策系」「士業などの専門系」など業種によって多様化しているとありますが、具体的にはどういうことでしょうか。

櫻井浩樹さん 「戦略系」とは、主に企業相手に経営戦略の相談に乗ったり、コストカットやマーケティング対策をアドバイスしたり、M&A(企業の吸収合併)を進めたりと、経営全般にかかわるところです。

「政策系」とは、大手シンクタンクなどを中心に、政府や自治体などを対象に、経済政策や景気対策などの公共政策を立案、進言するところです。

「士業などの専門系」とは、公認会計士、弁護士、税理士、中小企業診断士などの「士業」が専門知識を生かし、新たにコンサル会社を始めるところです。たとえば今、公認会計士のいる監査法人がコンサル業界に盛んに進出しています。

また、中小企業診断士などが補助金申請のアドバイスなどを手掛けたり、弁護士が法律の知識を生かして情報セキュリティーのコンサル会社を作ったりと、さまざまです。

「勘違いコンサル」で終わらぬためには...

――ずいぶん他業種から参入しているわけですね。今後、コンサル業界はどうなっていくでしょうか。また、企業でつちかったスキルや専門知識を生かし、独立してコンサルで身を立てようとする人へのアドバイスをお願いします。

櫻井浩樹さん 多様な分野を求める時代を迎え、コンサルの需要はますます重要になり、市場は広がると思います。その一方で、苛烈な生き残り競争がさらに進み、実績と特色を打ち出せないコンサル企業の淘汰が加速するでしょう。

コンサルタントは属人的な部分も強いですが、いかに自身がスキルを高め、同時に優秀な人材を確保し、顧客が望む価値以上の付加価値、アイデアを提供できるかを問われます。顧客に自身の価値を感じてもらい、長期間にわたり継続するクライアントの確保が必要になります。

コンサルには、知識や経験はもちろんですが、人間力も重要です。くれぐれもサラリーマン時代の経験や知識は、組織がバックにあったことを認識しないと、単なる「勘違いコンサル」で終わる可能性が高いでしょう。

(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)

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