立ちんぼで体売ってまでホストクラブに通う 日本社会の闇「ホス狂い」はなぜ誕生したのか

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   骨の髄までホストクラブに浸かる、「ホスト狂い(通称:ホス狂い)」の度を超えた行為がたびたび世間を賑わせている。

   例の公園周辺の立ちんぼに加え、昨年の秋ごろ海外出稼ぎの一斉逮捕も話題となり、リスクを冒してまで夜遊びを続けたい人が目立つ昨今の世の中には深い闇を感じてしまう。

   昔から「アブないお客様」は夜の街にいたものの、ここまで明るみになると社会問題として取り上げざるを得ないのだ。

  • ホス狂いの心理を紐解く(写真はイメージ)
    ホス狂いの心理を紐解く(写真はイメージ)
  • 筆者のたかなし亜妖さん
    筆者のたかなし亜妖さん
  • ホス狂いの心理を紐解く(写真はイメージ)
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「なぜそこまでして金策に走るのか」

   繁華街と無縁の人々からすると「なぜそこまでして金策に走るのか」と疑問に思うだろう。

   当の本人たちはお金を稼ぐのに必死だが、不思議なことに太客と呼ばれる女性の全員が指名しているホストにお熱なわけではい。「恋」をしているから大金を注ぎ込む、というのは間違った認識。

   太客にもさまざまなタイプがいて、承認欲求が強いあまりホスト通いをする女性も多い。

   夜のお店は大金を支払う客が一番偉いのだから、ピラミッドの頂点に立って快感を得たい人間が現れるなど、日常の光景に過ぎない。「自分は客」なんて自覚がありながらも特別な気分を味わい、少しでも心を満たしたいのだ。

   「担当(指名ホスト)のことを気に入っているのはもちろんだが、高額シャンパンをオーダーした時の高揚感が何よりも好きだ」と話す女性客は、意外にも多いという。ある売れっ子ホストの話によると、高額オーダー=みんなから認められた証のようなもので、そこに執着心が生まれた結果、月に数百万をつぎ込む「太客」へと育つらしい。こういうケースはよくある話だそうだ。

   ホストクラブとは非日常の世界で、一般社会とは大きくかけ離れている。どんな仕事に就いても否定されることはなく、己を曝け出せる場でもある。日頃から隠し続けている欲を思う存分に発揮できるからこそ、女性たちは飲み屋でしか得られない特別感に激しく溺れる。

キャストは仕事であり、客は遊び

   もちろん、太客の中には指名ホストに本気で恋をするタイプも多い。この手の人々は乙女心が暴走して、振り向いてもらうためになんとしてでもお金をかき集める。

   世間では「飲み屋の人間に恋をするなんて馬鹿げている」と非難されるけれど、「応援」が「恋愛」に変わってしまうのは致し方がない。

   なぜなら、水商売は自分自身が売り物。つまり自分のことを激しく好いてもらわねば大金を遣ってもらえないのだから、仕事の一環として「それっぽい」営業をかけるのは当たり前の話である。

   ただし、どこまでいってもキャストは仕事であり、客は遊び。そもそもの感覚にズレが生じるため、少女漫画のように甘い言葉をかけられたら心が動き、男と女ならば「ちょっとくらいはイケるかも」と多くの客が勘違いしてしまう。お酒が入っていれば、なおのことだ。

   はなから100%割り切れる人は夜遊びに深くハマらないので、店で恋に落ちるタイプは男女問わず、お金という力で相手を振り向かせたがる。冷静な目で見たら歪んだ愛情表現なのだろうけど、夜の街では札束=愛が暗黙のルールなのだから、この認識が根付くと「沼る」のも時間の問題である。

大金を用意すればちやほやされるかもしれないが

   ホス狂いの心理を紐解くと、複雑な心情が絡み合っている。そのため、危ないことをしてまで稼ぐ女性たちの気持ちを完全否定はできない。どんな人間にだって恋をする気持ちや、承認欲求が必ず備わっているのだから。

   しかし、道を踏み外してまで遊びに全力投球するのは間違っていると筆者の私は思う。

   大金を用意すればホストクラブの店内ではちやほやされるかもしれないけど、外に出れば日常生活が待ち受ける。この世の中で生活を送る以上はいち社会人として、常識を逸脱してはならないのだ。

   遊びを優先し過ぎて、今後の人生にキズがつくのはもったいないこと。自分自身が困るだけならまだしも、周りを巻き込めば取り返しがつかなくなるかもしれない。たとえ非常事態に陥っても、指名ホストは何も助けてくれないだろう。海外出稼ぎの逮捕や、いただき女子りりちゃんの件が良い例ではないか。

   今の社会は便利で刺激的だけれど、どこか物悲しさを感じる。心の隙間が広がる大人が多く、スペースを埋めるべく飲み屋に癒しを求めたい気持ちは理解できないものではない。

   ただ、隙間を埋めるために何をしてもいいのか?と聞かれると、答えは「No」。満たされなくとも、どこかでセーブできる心が残ってほしいと思う。どうか危ないことに手を染める女性たちが、身近なところで救われるのを願うばかりだ。



【プロフィール】
たかなし亜妖/2016年にセクシー女優デビュー、2018年半ばに引退しゲーム会社に転職。シナリオライターとして文章のイロハを学び、のちにフリーライターとして独立する。現在は業界の裏側や夜職の実態、漫画レビューなど幅広いジャンルのコラムを執筆中。

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