「自分がいいと思わなければ、他人になんか紹介しない」
またAさんによると、制度の成果を上げるには「社員への周知」が実は重要だという。
「人事の方は、制度の細部まで細かく詰めることは好きなんだけど、それを社内に浸透させることを面倒がる人が結構いますよね。機会があるごとに経営トップから繰り返し告知してもらうとか、とにかく回数を増やすことが大事です。その際、自社の社名をもじった制度のネーミングをつけるとかも効果があったりします」
モスフードサービスの店舗運営子会社モスストアカンパニーでは、2017年から社内人材紹介制度「リファモス」を導入しているというが、これなどはその一例だろう。
なお、社員が自社に来てほしい人を食事に誘った場合、その費用を会社が全額負担する制度は、メルカリなどいくつかの会社が採用しているという。なかなか太っ腹だが、Aさんは、採用の決定率が上がるなら安いものだと指摘する。
「例えば、年収650万円の人を転職エージェント経由で採用して、成果報酬を3割支払う場合、単純計算で195万円になりますよね。それと比べたらディナー代なんて安いもんじゃないですか? 知り合いが社内にいれば、定着もしやすいわけですし」
先の調査結果でも、1人あたりの平均インセンティブは13~17万円程度とのことだ。しかし、Aさんがそれよりも大事と強調するのは「既存社員の満足度」だという。
「結局、自分の会社がいいと思わなければ、友人知人になんか紹介しないですよ。新たに採りたい人だけでなく、いまいる社員の満足度を高めなければ、リファラル制度は機能しません。身も蓋もない結論ですが、社員の満足度が高ければ、制度がなくたって優秀な人材を呼んでくるものです」