「〇〇先生、いらっしゃいますか」 こんな敬語を使えない高校生が増えている

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   首都圏のある高校での話だ。

   2学期の期末試験が近づいてきた日、教職員室に男子生徒が入ってきた。元気よく、「〇〇先生、いますか?」。先生が机から顔をあげて、「違うなあ。『いらっしゃいますか』だろ。入ってくるところから、やり直しなさい」。

   敬語をうまく使えない高校生が増えている。教える側も、さまざまな工夫をはじめている。高2向けに敬語のロールプレイングの授業案を作り、ネット上で公開している国語教師は「面倒だ、難しいという生徒の声も多い。敬語を使う抵抗感を減らしたい」とねらいを話す。

  • 高校生が抱える「敬語」問題
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留学生向け「ハイパー敬語入門」、わかる?

   外国人に日本語を教える「日本語教育」のノウハウを、日本人の高校生の授業で活用する学校もあらわれた。日本語教育は、日本語を母語としない人たちが日常生活を営めるように、「読む」「書く」「話す」「聞く」の4技能を学ばせる。そのため国語教育と異なり、ドリルやコミュニケーションの練習を重視する。そのパターンは東京都立大学の留学生向けサイト「ハイパー敬語入門」にみることができる。簡略化して紹介すると。

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学生:(1)〇〇。先生、ちょっとお願いしたいことがございまして、少しお時間を(2) 〇〇よろしいでしょうか。
先生:あ、はい。何ですか?
学生:あのう、今度、奨学金を申し込もうと思いますが、募集要項にですね、指導教員の推薦が必要だということが書いてありまして、今日は先生に推薦書を(3)○○ということで伺いました。

○○に入る言葉を選んでください。

(1)失礼になります/お失礼します/失礼です/失礼します
(2)くれても/あげても/いただいても/お使いになっても
(3)書いてくれないか/お書きになるか/お書きにするか/書いていただけないか

答えは最後に掲載。

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若い世代は「日本語力」に不安

   文化庁の「国語に関する世論調査」(2021年度)によると、16~19歳の4人に3人(76.2%)が「言葉や言葉の使い方について自分自身に課題がある」と思っている。その理由は「敬語を適切に使えない」が50.5%で最も多く、「改まった場で、ふさわしい言葉遣いができないことが多い」も49.5%だった。

   この背景について、「高校生はアルバイトくらいしか、知らない大人と話す機会がない。敬語を使う日常的な環境がない」とベテラン教師は嘆く。「家庭や学校教育に問題がある」とみる塾講師もいる。言葉遣いの学びが軽視されがちで、コミュニケーションの場で敬語を使う練習も足りない。さらに、テレビやインターネットメディアの出演者が正しい敬語を使っておらず、「タメ口」でしゃべることも影響しているのではないかという。

   いずれにせよ、高校生のせいにするのではなく、彼らをとりまく環境に目を向けるべきだろう。大学入試の面接対策として敬語をとりあげる進学情報サイトも複数ある。敬語に悩む高校生の姿は、若い世代が自覚する「日本語力」の不安を浮き彫りにしている。

答え (1)失礼します (2)いただいても (3)書いていただけないか

(ジャーナリスト 橋本聡)

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