「103万円の壁」論議で、引き上げの壁のひとつになったのが、地方自治体からの悲鳴だった。巨額の負担は地方財政を圧迫し、住民サービスが悪化する。あちこちの自治体から声が出た。
地方自治体にはその財力を測る財政健全化指数がある。毎年、総務省が発表し、財政が健全と判定された団体には地方交付税が下りてこない。しかし、住民に独自のサービスを提供できるなどの利点が大きい。2024年度の場合、全国1741市町村のうち、「健全」と判定された団体は83に過ぎない。多くの自治体は「苦しい財政状況」にあり、壁の引き上げに伴う悲鳴はここから出ていると言える。
健全なのには「理由」がある
「全国エリアの財政健全度ランキング」という表がある。ドコモが運営するOCN不動産・賃貸サイトが総務省の資料などをもとにまとめている。
この順位を見ると、健全な理由がそれなりにわかる。
1位は愛知県のみよし市。人口6万でトヨタの工場がある。2位は東京武蔵野市。高級住宅街、商業地である。3位は愛知県の刈谷市。ここにもトヨタ、デンソーが立地している。4位は東京の立川市。5位の安城市、6位の大府市、7位の碧南市、8位の豊田市、9位の東海市と愛知県が続く。工業が地方財政にも大きな役割を果たしている。東京競馬場のある東京・府中市は10位だ。
12位に埼玉県の戸田市が登場する。同市は健全自治体上位の常連である。
戸田競艇場のおかげで健全なのか?
ネットには「戸田競艇場のお陰だろう」という見方が出ている。競艇の上りが市の財政を支えているのではないかとの推察だ。しかし、戸田市の財政担当者に聞くと違った。
戸田市の年間予算は2024年度の一般会計が624億である。歳入の50%近くが市税である。市が受ける競艇配分金は約5億円、その1%にもならないという。戸田市のホームページにも「戸田市は競艇の収入があるから大丈夫と言われるが、かつてと比較すると減っている」とある。
戸田市は東京都に隣接する住宅地であり商業地でもある。働く人口比率が安定しているのが税収の安定につながっているとみられる。愛知県の自治体がトヨタの城下町であるように、戸田市は荒川を渡ると東京都。東京の城下町なのだ。
戸田市でも、103万円の壁がなくなることによる減収の試算をしたそうだが、公表はされていない。
(J-CASTニュース・リサーチ班)