キャリアを決めるのは自分か?会社か? いまこそ必要「キャリア自律」...5年後、10年後なりたい自分を想像して(1)/第一生命経済研究所・福澤涼子さん

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大学生の就活時期にバタバタと進路を決める若者が多いのは日本だけ

――しかし、キャリア自律というと聞こえはいいですが、「結局、自己責任でやれ!」ということでしょう。これまで人事権を握っていた会社が「君たちのキャリアには責任を持つから、異動・転勤はこちらの指示に従え」と言ってきたのに、今さら「自分のキャリアプランは自分で考えろ」と放棄するのは無責任ではないでしょうか。

福澤涼子さん たしかに近年、「キャリア自律」という言葉がメディアにもてはやされて、キラキラしたイメージを発信していますが、実際には自己責任が高まる働き方と捉えるべきだと思います。

ただ、すべて個人が自己責任で努力するだけではなく、会社もフォローすべきではないでしょうか。

――それにしても自分のキャリアプランを描けていない人が多いのは、どういう理由からですか。リポートでは会社主導の人事権を理由にあげていますが、会社の責任ばかりではなく、本人にも心構えや努力といった面の理由はないのでしょうか。

福澤涼子さん 会社以外ですと、教育の問題もあると考えます。日本は学校での学びと将来を接続して考える人が少なく、あまりキャリアについて考える機会が少ないままに、就職活動を迎える傾向にあるといえます。

将来の進路を決めるタイミングが、海外と比較して大学生後期に集中しているのも日本の特徴です。たとえば、経済産業省の「未来人材ビジョン」(2022年5月)のデータによると、日本の学生は卒業後の進路を決める時期が「大学生後期」の割合が66%に集中しています。海外の国々では、中高生の段階で決める人や大学卒業後に決める人も多く、ここまで偏りはありません。

――大学生の時期にだけ集中するのが日本だけというのは意外です。長年、将来をじっくり考えずに、就活生の時期に、あわててバタバタと進路を決めてしまう弊害が出ているわけですね。

福澤涼子さん 学校教育でも昨今ではキャリア教育に力を入れています。たとえば、文部科学省が2020年から導入した「キャリア・パスポート」という仕組みがそれです。

小学校から高校まで自らの学習状況やキャリア形成を見通したり振り返ったりしながら、将来の生き方を考えるための教材です。よりこうした教育が進んでいけば、今後、将来のキャリアについてより若い段階から考える人も増えていきそうです。
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