「企業の寿命」より、自分の「働く寿命」のほうが長い
J‐CASTニュースBiz編集部は、福澤涼子さんから話を聞いた。
――働く人のキャリアを決めるのは本人か、会社かという問いかけについては、ズバリ、どちらだと考えていますか。
福澤涼子さん 二律背反するものではないと思いますが、どちらかという本人である世の中になってほしいと思っています。
いま働く人は多様化しています。たとえば、大手企業であればいろいろな勤務地に転勤し、それで少しずつキャリアアップしていくような流れがあります。しかしこれは男性中心のキャリアアップで、小さい子どもを育てている女性はそういうケースで簡単に「はい、行きます」とは言いにくいです。
私は2回転職をして、前職でワーキングマザーのキャリアアドバイザーをしてしました。ママたちは子どもの学校のこともあるし、転勤することは難しいことも多いものです。もっとキャリアアップして稼ぎたいと思っても、子育て中だからとキャリア展望の持ちにくい補助的な業務を任されることもあり、それが「マミートラック」です。
一方で、仕事をセーブして子育てに重点を置きたいと考えるワーキングマザーもいて、どちらが正解とも言えないと思います。そのため、本人の希望がより反映される人事だと良いのにと感じてきました。
――それは、もちろん男性も同じですね。
福澤涼子さん より個人が決めていく時代になっていくと思います。かつては、日本の企業は長期の雇用を保障する代わりに、本人のキャリアについては企業が主導権を持ち人事管理をしてきました。
いろいろなポジションを順番に経験する人事異動で、年功序列で給与があがり偉くなっていくキャリア形成でした。ですが、今では長期的な雇用が保障しにくくなっています。
それに、ビジネス変化のスピードが早くなり、事業が生まれて撤退するまでのサイクルも早くなりました。事業が急になくなることが増えると、長期的な計画をもとにキャリア形成を支援することが難しくなっています。従来の画一的なキャリア形成支援では不十分なのです。
――つまり、会社任せではなく、自分でキャリア形成を考えていかないとダメだということですね。
福澤涼子さん そのとおりです。本人の主体性が大事になるのです。それに、私たちが働く期間が延びているなかで、「企業の寿命」より自分の「働く寿命」のほうが長いことだってあるわけでしょう。
だからこそ、就職しているから安心ではなく、いつでも転職できるように自分の市場価値を高めていく必要があります。「エンプロイアビリティ」(雇われる力)が重要になると言われます。企業でのキャリア形成支援では、必ずしも他社でもやっていけるスキルを身に着けさせてくれるわけではありません。
自分自身で労働市場を意識しながら、スキルを身に着けておく必要があり、そのためにも自分で自分のキャリアを形成していくという姿勢や行動が求められるのです。