2002年秋場所は「奇跡の復活場所」
5日目までの貴乃花は、2勝3敗と相撲人生の土俵際に追いやられていた。だがここからが貴乃花の真骨頂だった。6日目から9連勝を飾り、12勝2敗で迎えた千秋楽。相手は12勝2敗で並ぶ横綱武蔵丸だった。
優勝賜杯がかかった結びの一番。立ち合いから貴乃花はおっつけで武蔵丸の差し手を封じようとしたが、武蔵丸の圧力に屈し、最後は右差しを許して左かいなを返され、寄り切られた。
渡邉氏が課したノルマを果たし、最後まで優勝争いをした貴乃花。この場所で全てを出し切ったかのように、貴乃花は翌九州場所を全休し、翌年の初場所で引退した。2002年秋場所が貴乃花にとって最後の晴れ舞台だった。
読売グループの総裁、渡邉氏と平成の大横綱貴乃花の2人の役者によって演出された2002年の秋場所は、のちに「奇跡の復活場所」として角界で語り続けている。
貴乃花に対して一貫して非情な言動を取っていた渡邉氏だったが、秋場所後の横綱審議委員会では貴乃花のことを「カリスマ的な存在」と称賛した。結果を出した者には正当な評価を与える。これもまた渡邉氏が見せた人間味だった。
(J-CASTニュ-ス編集部 木村直樹)