正月の風物詩、年賀状シーズンがやってきたが、あなたの会社、まだ年賀状を出していますか?
帝国データバンクが2024年12月13日に発表した「年賀状じまいに関する企業の意向アンケート」によると、2025年1月分の年賀状を送る企業は3社に1社にとどまる。
今年(2024年)10月、郵便葉書が1枚63円から85円に値上げした影響もあり、年賀状じまいを進める動きが加速している。
「メールに切り替えた」「会社のホームページで新年の挨拶を」
帝国データバンクの調査(2024年12月6日~10日)は、全国1339社が対象。自社が取引先などに送る年賀状の状況を聞くと、「すでに年賀状じまい」をした企業は49.4%と約半数となった【図表】。
もともと年賀状を出す習慣がない企業も約1割(9.6%)おり、再来年(2026年)1月分から年賀状をやめる企業も8.0%いる。結局、「年賀状じまいはしない」という企業は26.4%(4社に1社)だけで、2025年1月分の年賀状を送る企業は34.4(3社に1社)にとどまっている【図表】。
費用や手間の増加だけでなく、SDGsを考慮する企業が増えているようだ。年賀状じまいをした企業からは、こんな意見が聞かれた。
「メールに切り替えた。結果的に個人のメールアドレスに届くので返信がリアルとなり良かった」(機械・器具卸売)
「企業間の年賀状は、もともと関係の薄い先ほど年賀状だけのやり取りになっている印象があるため、コロナ禍での社会情勢に乗じて廃止とした。以後は会社HPでの挨拶で済ませている」(化学品製造)
「SDGsの定着と、社会的に儀礼などは廃止の方向で進んでいると判断し、年賀状じまいとした」(メンテナンス・警備・検査)
といった声が代表的だ。
「年賀状の準備の手間が以前から負担に」「他社も止めているし」
J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を行なった帝国データバンク情報統括部の担当者の話を聞いた。
――企業の半数がすでに年賀状じまいをしており、来年(2025年)1月分を出す企業は3社に1社という調査結果、担当者としてどのように評価しますか。
担当者 年賀状の調査は今回が初めてですが、総じて、意外と年賀状を出す企業が少なくなったととらえています。
すでに約5割の企業が年賀状じまいをしているわけですが、具体的に細かくみると、今年(2024年)1月の時点で3割の企業が年賀状じまいをしていました。これは2024年10月からの郵便料金の値上げが直接の引き金となったわけではなく、以前から年賀状じまいが進んでいたことがポイントと言えます。
――企業の間で以前から年賀状じまいが進んでいた一番大きな理由は何でしょうか。やはりコストでしょうか、それともSDGsでしょうか。
担当者 郵便料金の値上げや印刷代の高騰などに加え、企業からのコメントをみますと、年賀状の準備にかかる手間は以前から負担となっていたようです。
たとえば、「企業間の年賀状のやり取りは、過去と比べますます社交辞令化しており、それであれば手間と費用をかけてまで続ける必要はない」(建設)といった声があります。
また、「他社から年賀状の発送をやめる連絡が多い。自社もSNSでの挨拶とする旨を案内した」(機械)という声も複数聞かれます。他社や業界内の動向を鑑みて年賀状の取りやめを決定する企業も見受けられます。
コストやSDGsの観点もあると思いますが、より負担感の少ない、メールや会社のホームページで新年の挨拶をする企業が増えていると考えられます。
「日本の文化・伝統だ」「親密な取引先とのつながりを大切にしたい」
――しかし、それでも「年賀状じまいはしない」という企業が4社に1社います。そういう企業はどんな理由で年賀状を続けようとしているのでしょうか。
担当者 「日本の文化として他に代替できないと信じている」(化学品製造)という声に代表されるように、日本の文化・伝統を重視して年賀状が必要だと考える企業も存在します。
また、「親密な取引先とは、年賀状交換を続けている」(建設)などと、取引先とのつながりを大切にするため、長年の風習を守ることも1つの価値観と考えている企業もあります。
さらに、「自社で年賀状印刷の注文を承っているため、年賀状じまいをしない」(紙類・文具)という事情がある企業もあります。
――大企業と中小企業との間で、差があるでしょうか。
担当者 大きな差は表れていませんが、調査結果をみますと、やはり大企業のほうがやや年賀状じまいが進んでいます。小規模な会社ほど年賀状でのやり取りを大切にしているのかもしれません。
最近は、直接会うといった実務的な行動に重きを置く傾向もみられます。企業の間で新年のあいさつをとっても、さまざまな価値観を尊重する時代がきているような気がします。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)