モチベーションは、上がることよりも、「下がったときに上げられること」が重要です。
お客さまからきついクレームを受けたうえに上司から厳しく指導されたら、モチベーションはどうしても下がるもの。そのまま放置していたら、モチベーションは下がりっぱなしで、仕事の成果にも大きな影響を及ぼす可能性があります。「できれば早く上げたい」と考えるでしょう。
過去を振り返って、上がったときの要因を考える
下がってしまったモチベーションを上げるためには、まず過去を振り返り、下がったモチベーションが上がったときの要因を考えましょう。
たとえば、甘いもの、なかでもチョコレートを食べたときに活力がわいて、モチベーションが高まった記憶が思い出されたなら、「今やっている仕事が一段落したら、休憩タイムにお気に入りのチョコを食べよう」と決めて仕事に取り組むと、下がった状態から脱却できたりするものです。
人それぞれでモチベーションを上げるための大事な言葉の投げかけや行動・習慣をおさえ、生かしていきましょう。ここからは、モチベーションの上げ方を2つ、紹介していきたいと思います。
方法1:身近なところから「憧れの人」をイメージする
人に憧れを感じているときの自分の状態や、「自分の理想」だと思える状態を目の当たりにしたときの気持ちは、諦めそうになったときや、なんとなく目標を見失ったときに自分を立ち直らせてくれるものです。
あの人みたいになりたいという理想があるからこそ、「内発的な動機づけ」が生まれ、成長につながるのではないでしょうか? つまり、「憧れ」=「長期的モチベーション(スタミナ)」だと感じています。
憧れの対象は、何から何までできるパーフェクトな人物である必要はありません。仕事であれば提案書のつくり方とか、朝礼での話し方とか、部分的な仕事ぶりであっても「すごい、その人のようになりたい」と思えれば十分。
それくらいで考えないと、「自分の周りには憧れの存在なんていません」と言い切る人ばかりになりそうだからです。部分的であれば可能性は広がります。
自分の周りをよく観察して探してみましょう。できれば、身近な範囲で憧れが見つかるのがベスト。それがどうしても厳しければ、「なりたい」と思える存在を、経営者、歴史的な人物などまで広げて探してみてください。
そうして「あの人のようになりたい」という思いをモチベーションが下がったときに思い出して、上げる方向にもっていきたいですね。
方法2:成果を出したときの自分を思い出す
少しばかり古い話になってしまいますが、水泳の北島康介さんはアテネ五輪(2004年)の100メートル平泳ぎで金メダルを取ったときに「チョー気持ちいい」と発言していました。
それだけ、会心の泳ぎと成果でモチベーションがマックスまで上がっていたことでしょう。みなさんもそこまではいかないかもしれませんが、気持ちいいと思える瞬間が過去にあったのではないでしょうか?
たとえば、大きなプロジェクトを任されて大成功を収めたとき。その途中には、失敗しかけてモチベーションが下がったこともあったかもしれません。でも、それを乗り越えて成果を出したときにモチベーションは大いに上がったことでしょう。
このときにどのような状態であったのか? それを忘れないように覚えておく。具体的には、そのときの状況を描写しておきます。そうして、モチベーションが下がったときに口に出して思い出すのです。
仕事がうまくいかない状況が続いてモチベーションが下がったときに「営業成績で1番を取り、社内表彰で社長から褒められた。周囲からもよくやったとたたえられた」と、そのときの状況を事細かに思い出し、できれば口に出してみましょう。
そのときの自分にまたなりたい、なれるはずであると思えれば、モチベーションが上がる要因になるはずです。
あるいは、コールセンターの仕事でお客さまに喜んでもらえたとしましょう。そのときの状況を掘り下げて描写して、覚えておくのです。
たとえば、「ありがとう、こんなに丁寧な対応をしてくれた人は初めてです」と感動の言葉をかけてくれた。その状況をモニタリングしていた上司から「素晴らしい仕事ぶりだ」とたたえられ、自分の気持ちが相当に高揚した......といった具合に覚えておいてください。
モチベーションが上がっているリアルな状況のときは、気持ちが高揚していて描写しておく余裕なんてないかもしれません。そのため、モチベーションが上がって間もないうちに、忘れないようにメモしておいてください。
具体的に掘り下げて「それって、どういうこと?」と疑問を投げかけ、可能な限り、詳細を書き留めておきましょう。どんな光景だったのか、どんな会話があったのか、どんな感情を抱いたのかを覚えておくと、モチベーションを上げる貴重な手段になるはずです。
また、記憶が残っているだろう時期までさかのぼり、モチベーション曲線を描いて、モチベーションが上がったときの描写をしてみてはどうでしょうか? 貴重な手がかりが見つかる気がします。
【筆者プロフィール】
高城 幸司(たかぎ・こうじ):株式会社セレブレイン代表取締役社長。1964年生まれ。リクルートに入社し、通信・ネット関連の営業で6年間トップセールス賞を受賞。その後、日本初の独立起業専門誌「アントレ」を創刊、編集長を務める。2005年に「マネジメント強化を支援する企業」セレブレインの代表取締役社長に就任。近著に『ダメ部下を再生させる上司の技術』(マガジンハウス)、『稼げる人、稼げない人』(PHP新書)。