若い男性は、仕事と家庭の両立のバランスに真面目に悩んでいる
――しかし、それは若い女性でも同様ではないですか。
村松容子さん 少し、違うと思います。女性は昔も今も、職場には必ず男性上司がいて、男性社会の中で仕事をしているという意識があります。また、その悩みは世代を超えた共通の悩みです。女性はどういう人生の道を選んでも生じる悩みを多くの世代で共有できます。
たとえば、独身でいると「結婚しないの」と聞かれ、場合によっては職場にいづらくなる。結婚しても子どもがいないと「子どもは?」と聞かれる。仕事を持って子どもを保育所に預けると「子どもが可哀想」といわれる。かといって、専業主婦だと、「いいわね、楽(らく)をして」といわれる。
そうした悩みは女性一般に共通したもので、世代が違っても「あ、あれね」とお互いに想像がつきやすいと思います。
しかし、今回の結果から、世代の差は女性より男性が大きい可能性があります。今の若い男性が抱えている仕事と家庭の両立に関する悩みは、上の世代の男性に相談しても理解されにくいのではないでしょうか。
――その若い男性の「悩み」ですが、女性が同じ土俵に乗ることの、どこが「不利益」になるのでしょうか。先ほどの仕事と家庭の両立支援が広がっていることが「女性優遇・逆差別」になり、不満だというということですか。
村松容子さん 仕事と家庭の両立支援が進められるようになってきたからこその職場や家庭からの期待が、若い男性のプレッシャーになっている可能性があります。
「不利益」を感じている若い男性の特性を詳しく調べると、上の世代の男性と比べて、「仕事で成功したい気持ちがあると同時に家庭との両立に対しても積極的であり、仕事も家庭も大切にしたい」という意向が強いことがわかりました。
仕事と家庭の両立のバランスに、真面目に悩んでいるのです。上の世代の男性は仕事オンリー、家庭を顧みなくても仕事で成果をあげれば、高い評価が得られました。
しかし、現在は「家庭を大事にしろよ」「しっかり育休も取れよ」と言われます。その半面、家庭を優先したくても、「仕事を放りだすつもりか!」と批判される場合もあります。しっかり稼いでほしいという家族の期待は女性よりも感じているかもしれません。