日本企業はなぜリスキリングに消極的? 「実務に結びつかない研修は時間の無駄」経験者が指摘

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「デジタル人材N万人計画」では業績は上がらない?

   Aさんによると、グローバル展開をする大手有名メーカーでは、事業ポートフォリオ再編の一環として、芽が出ない新規事業からの撤退を決めたという。

   そこで希望退職を募るとともに、これまで機器を動かすプログラムを開発していた組み込みエンジニアを、EC向けのウェブエンジニアに異動させる計画を立てた。

   そして、異動を希望した社員に対し、リスキリングを目的とする大規模な研修を実施したという。Aさんは「一般的な常識から考えると大胆すぎるようにも思えますが、まったくのゼロから教えるよりも習得が早く、戦力化しやすかったと聞きました」と明かす。

   Aさんは、このようなリスキリングはもっと増えていくべきだと主張する。

「日本企業は米国などと異なり、実質的に解雇が困難です。事業から撤退しても、社員を他部署に異動させるなどして、雇用維持の努力をしなければいけない。このときに生じたスキルのミスマッチを解消させるために取り組むのが、本来のリスキリングです」

   一方、多くの日本企業の場合、明確な目的を持たずに「全社員のスキルの底上げ」と称して、全員に同内容の研修や試験を行う場合が多いという。確かに調査結果でも、取り組み内容に「従業員のスキルの把握、可視化」や「eラーニングの活用」をあげる会社が多かった。

「おそらく多くの大手企業では『デジタル人材N万人計画』などという目標を掲げ、全社員を対象に画一的なテストや研修を行い、会社全体のスキル底上げを図ろうとしていると思います。『リスキリングに取り組んでいる』と答えた8.9%の企業はこのタイプではないでしょうか。しかし、何かのツールを使えるようにするなど具体的な目的を持った取り組みじゃないと、スキルの定着もしないし、業績向上につながる成果も出てこないと思いますよ」
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