日本航空(JAL)は2024年12月10日、機長2人が滞在先のホテル出発前に行った検査でアルコールが検出され、出発が3時間以上遅れる事案が起きたと発表した。
乗務前に空港で行った正式な検査では検出されなかったものの、滞在先で社内規定を大きく上回る量の飲酒をしていた。
乗務直後の会社側の事情聴取で、2人は体調不良や検査の際の誤検知を主張し、飲酒を隠蔽。改めて事情聴取を行った際に初めて飲酒の事実を告白した。JALとしては「今振り返ると、欠航という判断をすべきだった」事案だ。
JALでは24年4月に機長が米国で飲酒トラブルを起こした影響で、運航乗務員(パイロット)や客室乗務員(CA)に対して、滞在先での禁酒令が出ていた。さまざまな教育が浸透したとして、10月に解除されていたが、今回の事案を受けて、12月11日に改めて運航乗務員に対して発令されることになった。
「スパークリングワインを1杯ずつ飲んだ後、2人でワインボトルを3本注文」
問題が起きたのは、12月1日のオーストラリア・メルボルン発、成田行きのJL774便(ボーイング787-8型機)。本来ならば現地時間7時20分に出発予定だったが、実際の出発は10時31分。事案の影響で3時間11分遅れた。
JALの規定では、(1)乗務前の検査でアルコールが検出されないこと(呼気1リットルあたり0.00ミリグラムであること)ことに加え、(2)「飛行勤務開始12時間前に体内に残存するアルコール量を4ドリンク相当以下に自己を制限すること」も求めている。「4ドリンク」は純アルコール換算で40グラムに相当する。ビールのロング缶(500ミリリットル)では2本分、日本酒では1合分にあたる。
2人は結果的に、乗務前に空港で行った検査で(1)はクリアしたものの、運航後の事情聴取で(2)の問題が発覚した。
オンラインで記者会見した南正樹・運航本部長の説明によると、現時点で判明している事実関係は次のようなものだ。
3人いるパイロットのうち、機長A(59)と機長B(56)が、フライト前日の11月30日の14時から16時にかけて、滞在先ホテル近くのレストランで食事をした際に飲酒。「スパークリングワインを1杯ずつ飲んだ後、2人でワインボトルを3本注文した」が、実際の飲酒量は「現在確認を進めている」という。
南氏の説明によれば「ハーフボトルで4ドリンク」。仮に2人でボトル3本を空けた場合、規定の3倍のアルコール量だ。
本来の出発時刻の55分後にやっと「不検出」
翌朝、乗務員一行は早朝5時にホテルを出発予定だった。機長Aはホテルで自主的に行った検査でアルコールが検出され、4時30分頃、飲酒には触れず「体調不良」で1時間程度出発が遅れることを会社側に連絡。6時にホテルで改めて検査した際には検出されなかったという。
6時47分に「運航乗務員の体調確認」「運航乗務員の手配」を理由に出発を遅らせることが発表され、直後の6時50分に行った乗務前の正式な検査で、アルコールは検出されなくなった。
一方の機長Bは、ホテルを出発する時点でアルコールが検出される状態だったが、5時に「そのままホテルを出発」。前日は別行動だった副操縦士が乗務前検査をパスした7時時点でも機長Bからはアルコールが検出される状態が続き、検出されなくなったのは8時15分だった。この間、機長Bはあくまでも「誤検知」を主張していた。
「今振り返ると、欠航という判断をすべきだった」
こういった経緯を会社側は
「3時間も遅らせてしまった運航乗務員の体調というのは、どういうことなんだ」
「明らかに時間をかけてアルコール検査をし直している」
などと疑問視。2人の帰国後に事情聴取したが、あくまで「体調不良」「誤検知」「乗務前検査では0.00ミリグラムだった」などと主張。改めて12月3日に事情聴取した際、初めて飲酒について明らかにしたという。
南氏によると、仮に会社側が飲酒の事実関係を事前に把握していれば「当該乗務員たちを乗務させないという判断を当時もしただろうし、現在もする」。本来ならば欠航すべきフライトが、機長2人の隠蔽行為が原因で運航されてしまったとの見方を示し、次のようにも話した。
「今振り返ると、欠航という判断をすべきだった」
「前日の飲酒を私どもは把握することができていなかったので、本人たちの乗務を止めさせるという判断ができなかった」
2人への処分は「検討中」だとしている。
(J-CASTニュース編集委員 兼 副編集長 工藤博司)