師走が押し迫ってくると、冬のボーナスが気になるものだ。
労働組合のナショナルセンター「連合」(芳野友子会長)が2024年12月6日に発表した「年末一時金回答集計(第3回、最終)」によると、組合員1人あたり平均支給額は74万1142円。昨年を上回り過去最高水準となった。
最高は「セラミックス」の94万円、最低は「交通」の28万円
連合の発表によると、1824労組、組合員約95万人の1人あたり加重平均額で74万1142円(昨年同時期6125円増)、月数は2.47か月(同0.09か月増)。少なくても、記録が残る2007年闘争以降の同時期最終集計としては過去最高だ。
業種別では、最も金額が多い製造業で81万1020円(1万9002円増)。だが、交通運輸52万7874円(4万4736円減)、商業流通も55万8393円(3万5906円減)と、業種によって増減にバラツキがある【図表】。
一方、組織別にみると、最も金額が多いのはセラミックス、陶磁器、ガラス、窯業(ようぎょう)関連業界などの労働者でつくるセラミックス連合(94万5849円、前年比7万83円増)、次いで化学、セメント、塗料、医薬品、化粧品関連業界などの労働組合でつくるJEC(ジェック)連合(90万8422円、同2万8448円減)など。
セラミックスは、電子部品などの材料になる日本のファインセラミックス業界が世界シェアの約4割を占め、右肩上がりで業績を伸ばしていること反映しているようだ。
一方、突出して金額が少ないのが、ハイヤー・タクシー・バス・トラックなどのドライバーや自動車学校関連業界の労働者でつくる交通労連(28万2226万円、同2万9427円減)だ。人手不足が深刻なうえ中小企業が多く、特に公共交通では価格転嫁が難しいことも影響しているとみられる。
「賃金も物価も上がらない」しみついている「あたりまえ」=「ノルム」を来年変えたい
J‐CASTニュースBiz編集部は、連合本部の担当者に話を聞いた。
――過去最高水準のボーナスですが、やはり1991年以降で最高となった今年春闘の高い賃上げ率(5.10%、連合集計)が表れた結果ですか。
担当者 各単組の交渉場面でも、労使双方が企業の持続的成長と、さらには日本全体の生産性向上のためには、「人への投資」の拡充が不可欠だという認識を深めたことが大きいです。お互いに真摯かつ有意義な交渉が行われた結果だと受け止めています。
――今回の結果を来年の賃上げ闘争にどうやってつなげていきますか。
担当者 2025闘争は、賃上げの流れを定着させ、そのすそ野を中小企業や労働組合のない職場まで広げることが最大のミッションだと考えています。
今年の春闘では33年ぶりとなる5%台の賃上げを実現しましたが、しかしながら中小企業の賃上げは5%に届いていません。適切な価格転嫁・適正取引を進め、格差是正につなげたいと考えています。
何より、組合づくりにも力を入れたい。厚生労働省の「賃金引上げ実態調査」(2024年)でも「労働組合の有無により、賃上げ率に約1ポイントの差が見られる」と指摘されています。
春闘は、労使交渉の機会が保障されている労働組合の強みをアピールし、組合に集う仲間を増やす絶好のチャンスです。働きがいのある職場づくりや生産性向上などについて労使で真摯に話し合いを積み重ねる機会でもあるのです。誰もが生活向上を実感できるよう「みんなの春闘」を展開していきたい。
――具体的には何をアピールしますか。
担当者 米国の経済学者アーサー・オーカンは、「ノルム」というキーワードを提唱しています。
ノルムとは「予想」より強い概念で、人々に根差している社会的な習慣や規範意識を意味します。長年の経験に基づき、人々の間には物価や賃金の上昇率について皆が当たり前として考える世間相場のような水準が形成されてしまうのです。
私たちは、みんなの賃上げでみんなの生活を向上させ、新たなステージの定着をめざしたい。「賃金も物価も上がらない」という、私たちの中にしみついているこれまでのあたりまえ、ノルムをいまこそ変えたい。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)