「私なら1日5時間勤務でも十分な成果が出せる」と提案しては
――フリーコメントでは、私は「さまざま職種で普及してほしい」という希望の意見の一方、「正社員だけでもハードルが高い。短時間となるともっとハードルが高くなりそう」という否定的な意見が気になりました。川上さんはどのコメントが一番響きましたか。
川上敬太郎さん 「通常勤務の社員にしわ寄せがありそう」という声が印象的でした。短時間正社員に限らず、週休3日制や有休取得促進、テレワーク導入など柔軟な働き方に関連するテーマには、必ずついてまわる懸念です。
逆にいえば、同僚に業務のしわ寄せが生じなければ、短時間正社員を受け入れやすくなるということです。これは基本的に業務設計の問題になります。
短時間正社員がいることで対応できない業務が発生する場合、その業務に対応できるだけの人員を用意する。AIなどの機械で代替する。あるいは、その業務は捨てるといった業務の再構築が、短時間正社員導入の鍵を握っていると言えるのではないでしょうか。
――短時間正社員がもっと広がるためには、ズバリ、何が一番大切ですか。
川上敬太郎さん 正社員という概念自体に、そもそも曖昧な面があります。
そこにメスを入れて、まずは「正社員=フルタイム」という固定概念を疑うことから始める必要があります。正社員に求められている成果が、本当にフルタイムでしか発揮できないのかを問い直すということです。
そのうえで、正社員と呼ばれている人たちが担当している仕事をタスク単位で細かく洗い出し、短時間や短日数だけでも無理なく回せるよう再構築した形で業務を切り出す必要があります。
そのような業務再構築の権限は職場側にありますが、業務に精通している働き手自身から提案することも有効だと思います。
――どういうことでしょうか。
川上敬太郎さん たとえば、「長年人事に携わってきましたが、社員募集から採用基準の策定・改定、選考に特化すれば1日5時間勤務でも十分な成果が出せると考えています」などと自ら提案することで、短時間正社員として活躍できる道が拓ける可能性もあります。
そうやって、戦略的な短時間正社員が活躍する機会が増えていけば、実際に働く人を目の当たりにする人が増え、短時間正社員という働き方に対する周囲の理解も進んでいくのではないでしょうか。
並行して職場側では、短時間正社員をめぐる実情の変化に合わせて評価制度や就業規則などに修正をかけ、体制整備を進めていくことが大切になります。