業績不振の日産、武田薬品 従業員キャリア支援の第一生命、富士通
J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を担当した東京商工リサーチ情報部の本間浩介さんに話を聞いた。
――この時期に早期希望退職の募集ラッシュが加速している理由は、ズバリ何でしょうか。
本間浩介さん 2021年はコロナ禍を背景に、外出自粛や緊急事態宣言で業務を縮小せざるを得なかった業界で募集が相次ぎ、実施社数は84社、募集人数も1万5892人に達しました。
その後、コロナ関連支援の柱の1つだった雇用調整助成金の特例措置などが効果をみせ、実施は2022年が38社(募集人数5780人)、2023年も41社(3161人)と落ち着いて推移しました。2023年に実施した41社のうち、東証プライムは19社と半分以下で中堅企業が目立ちました。
ところが2024年は、コロナ禍で先が見えない経営環境にあったために構造改革を踏み止まっていた大手企業が、一気に動き出した結果を反映していると思います。
――ここ1か月で日産、第一生命、武田薬品、富士通などのビッグ企業が続々と募集を明らかにしています。それぞれの企業の背景は何でしょうか。
本間浩介さん 日産自動車は、米国市場での販売不振、中国市場でのEV戦略の失敗などで大幅な減益だったことで、業績不振が背景にあるとみています。
第一生命ホールディングスは、東京商工リサーチの取材に対し、「ネガティブな理由からくる希望対象を募るのではない。従業員の多様なキャリア支援の一環」と回答しています。資本効率の改善などが背景にあると思います。
武田薬品は利益率の低迷から、米国の研究所を閉鎖し1000人規模の削減を実施するなどグローバルで構造改革を進めています。国内も事業運営体制の変化に合わせる形で募っています。
富士通は今回、間接部門の幹部社員を対象にセルフ・プロデュース支援制度として実施しました。グループ外で新たなキャリアへのチャレンジを希望する従業員に対する自己アピールの支援ですね。2021年もDX企業への変革を加速するため、セルフ・プロデュース支援制度で3031人の応募がありました。今回も同じような背景があると思います。