過酷な労働環境から精神疾患を発症し退職を余儀なくされたとして、千葉県内にある児童相談所の一時保護所の元職員・飯島章太さんが、県に対し未払賃金や慰謝料の支払いを求めて2022年に起こした裁判の第11回期日が、2024年11月27日に千葉地裁で行われた。
今回、飯島さん側は一時保護所の労働環境や裁判に至るまでの経緯をつづった陳述書を提出。2万5000字を超えており、代理人弁護士はこの長さになることは「まれ」だと話した。
仮眠時間は「ほとんど横になって目を閉じているだけの時間」
飯島さんが提出した陳述書は計24ぺージ、2万5000字を超える。
期日後に行われた報告会で、飯島さんの代理人弁護士は、陳述書について「これだけ長いのはまれ」だと話し、「児相で何が起こっているのかを生々しく把握してほしい」とその理由を説明した。
陳述書には、飯島さんが18年9月に内定を受け、19年4月に児相で働き始めてから裁判に至るまでの経緯や一時保護所の子どもにも職員にとっても過酷な環境、裁判への葛藤や思いが詳細につづられている。
例えば入庁当時について、飯島さんは配属先と土日休みではなく夜勤のあるシフト制であることを初日に初めて知ったことなどが記載されている。入庁翌日から実務に入らされ、一時保護所の職員としての専門知識やスキルを身に着けるための研修はなかったとしている。
また、仕事中は昼休憩をとることができなかったという。上司からは、昼休みは「子どもと一緒にごはんを食べるから無いのです」と言われたと記載されている。夜勤中は仮眠の時間があったものの、子どもたちの居室の前の廊下で寝ることになっており、布団がないこともあったという。子どもたちに異変があれば対応しなければならないほか、子どもがトイレに起きた時も様子を見る必要があり、「ほとんど横になって目を閉じているだけの時間」だったとしている。
子どもたちにとってもいい環境とは言えず
さらに、子どもたちにとってもいい環境とは言えなかったとも指摘している。19年5月以降、定員の2倍にあたる40人前後が保護されていることが常態化し始めたという。感染性胃腸炎が流行っても、人員不足のため職員が抜けられず、午前と午後に1人ずつしか子どもを病院に連れていけないこともあったとしている。
ほかにも、一時保護所の厳しいルール、子どものケアをしたいのに十分にできていないことへの葛藤、次第に不眠が続くようになったことなどがつづられている。
陳述書の最後には、仕事にはやりがいもあったことも記載されており、「労働環境をよくすることで職員を守り、よりよいケアを届けることで、その子供たちが大人になったときに、もし児童相談所で働きたいと思った子が健全に働けるような職場であるために、提起している」との、飯島さんの裁判にかける思いもつづられている。
「県に動いてもらえるようアクションしたい」
22年7月21日の提訴から2年4か月。飯島さんの思いは――。
飯島さんは、24年4月に一時保護所の運用に関する全国統一基準が設けられたことなどに触れ、児相の全体の環境改善は進んでいるとしつつも、千葉県ではなかなか進まないと話す。問題提起はやり切ったとし、今は職員の労働時間などについて県が認めるフェーズだとした。「県に動いてもらえるようアクションしたい」と話した。
県が裁判で提出した準備書面によると、県は、昼休憩時間について、子どもたちとの食事の時間とは別に取得することになっていたと主張。また、夜間勤務の実態については認めているものの、突破的な事態の頻度について飯島さんの主張を認めていない。飯島さんの勤務していた一時保護所において「夜間勤務が過重な勤務というわけではない」などと主張している。
県児童家庭課は27日、J-CASTニュースの取材に、「係争中でありますため、コメントは差し控えさせていただきたい」とした。