三菱UFJ銀行の元行員が在職中に客約60人の貸金庫から計十数億円を盗んでいたと同行が発表したことは、メガバンクの大きな不祥事として衝撃を与えた。
その余波から、5年前に他行の貸金庫に預けた1000万円が盗まれたとユーチューブで連続投稿された動画が、再注目されている。
銀行は、行員はシステム上盗めないとしたが...
これらの動画を投稿していたのは、放送作家の安達元一さん(59)だ。公式サイトでは、日本テレビ系「踊る!さんま御殿」など数々の著名なバラエティ番組を手がけたと紹介されている。
安達さんのユーチューブチャンネルでは、貸金庫から1000万円が消失したときから、銀行や警察とのやり取りの顛末まで計18本ほどの動画が投稿されていた。
最初の動画は、2019年11月15日に「貸金庫を開けたら空っぽだった」とのタイトルで公開された。
「大事件ですよ!」
安達さんは、住宅に関する重要な書類を確認しようと銀行に行き、貸金庫を開けると何も入っていなかったと、苦渋の表情で報告した。銀行では、まず本当に金を入れたか聞かれ、安達さんは、入金を証明できなかった。
しかし、カードキーとカギの2つで開錠することから、カードを差した履歴を調べるよう銀行に求めた。すると、以前には、5年前の開設日のほかに、3年前に1回の履歴があった。
その後のいくつかの動画によると、3年前のその日は、安達さんは、銀行に行っていたが、金を持ち出した記憶やそれを示す記録はどこにもなかった。もしかして行員が盗んだのではないかと思ったが、銀行は、システム上それはできないと否定した。防犯カメラの映像は、保存期限を過ぎていたという。
安達さんは、警察に相談に行ったほか、弁護士ともやり取りした。しかし、弁護士は、有利な証拠はなく、訴訟で銀行に勝つのは難しいと説明した。
その後、銀行幹部が安達さんと応対し、調査すると約束した。結果として、行員が1000万円を盗んでいたとして謝罪し、返金された。それ以外に、解決金も支払われたとした。この幹部は、安達さんの説明が理に適っているため、きちんと調査することにしたと説明したという。
犯行の手口を知りたかったが、銀行は応じず
とはいえ、安達さんは、行員はシステム上盗めないと銀行が説明したにもかかわらず実際は盗んでいたため、なぜなのか犯行の手口を知りたいと思った。
しかし、その説明を求めると、銀行は、防犯上の理由から、手口など詳細については何も明かさなかった。警察も、捜査中のことは教えられないと答えたという。法務省の被害者等通知制度を利用しようとしたが、被害者は安達さんではなく銀行だとされて、大きな壁に突き当たった。
こうした点について、安達さんは、犯罪抑止のためにも、手口は明かされるべきで、銀行は公的機関である以上、不祥事を発表すべきだと不満を漏らしていた。
安達さんが5年前に連続投稿したこれらの動画は、24年11月26日にインフルエンサーに取り上げられて、ネット上で大きな話題になった。
安達さんも27日、動画のことを話すよう視聴者から求められたとして、「貸金庫のお金盗まれた!まとめ」と題する新たな動画をユーチューブに投稿した。
そこでは、「私の銀行は、UFJ銀行じゃありません」としたうえで、貸金庫の利用者に注意を呼びかけた。
5年前の当時にネットで調べると、別銀行でもう1人貸金庫の被害者がいたといい、他人事ではないということだ。「怖い時代ですね」と話し、利用者は定期的に貸金庫の中身をチェックするとともに、銀行は事件の原因を究明して再発防止策をきちんと考えることが大切だと訴えている。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)