近年、電動キックボードなどの「マイクロモビリティー」(超小型移動手段)で通勤したり、レジャーを楽しんだりする人が増えてきた。
デジタル市場専門の調査会社「MMD研究所」(運営元はMMDLabo、東京都港区)が2024年11月18日に発表した「マイクロモビリティーに関する調査」によると、知っている人は約4割、そのうち利用経験がある人は約3割いる。
レンタルで利用する人が多いが、どこのサービスが人気なのか。調査担当者に聞いた。
電気で動く超小型乗り物、環境に優しいのが特長
マイクロモビリティーは、通常の自動車よりサイズが小さく、通勤や買い物、レジャーなどちょっとした移動に使える。具体的には電動キックボード、電動アシスト自転車、電動バイク、電動スクーター、マイクロカー(一人乗り)などを指す。電気で動くため環境に優しいのが特長だ。
MMD研究所の調査(2024年10月28日~30日)は、18歳~69歳の男女7000人が対象。マイクロモビリティーのレンタル利用を中心に聞いた。
マイクロモビリティーを知っている人は約4割(39.4%)、うち利用経験のある人は約3割(28.6%)【図表1】。利用経験者789人に、利用頻度を聞くと、「1週間に1回~2回」が最も多く、次いで「1週間に3回以上」となった。経験者の半数近くが毎週利用している【図表2】。よほど便利なのだろうか。
利用しているレンタルサービスは「LUUP」(ループ)がダントツの1位で、次いで「ドコモ・バイクシェア」、「Lime」(ライム)、「movicle」(モビクル)が続く【図表3】。
どんな理由で利用するのだろうか(複数回答可)。「短距離の移動」が最も多く、「自分のペースで自由に移動」、「環境に配慮した乗り物だから」(21.0%)、「旅行先での移動」と自由な使い方が受けているようだ【図表4】。
スマホから気軽に予約、返却できる便利さが人気の秘密
J‐CASTニュースBiz編集部は、MMD研究所の調査担当者に話を聞いた。
――マイクロモビリティーを知っている人が約39%、うち利用経験者が約28%という調査結果、担当者としてかなり浸透してきたと思いますか。
担当者 一定の浸透が進んでいると考えられます。しかし、知っている人が過半数に届いていないことから、さらなる普及の可能性が残されています。
また、利用頻度でも「1週間に1回~2回」が最も多く、継続利用の面でも課題が残っています。現段階では「浸透しつつあるが、成長余地が大きい段階」と言えるでしょう。
――成長余地が大きいのは、どういうメリットがあるからでしょうか。
担当者 何より電動キックボードや電動アシスト自転車などは、スマホから気軽に予約、返却の操作ができる便利な小型の乗り物です。自分のペースで効率よく移動できるし、交通渋滞の緩和や二酸化炭素削減に寄与できる点も大きなメリットでしょう。
――利用するサービスでは「LUUP」がダントツの1位ですね。4位までの「ドコモ・バイクシェア」「Lime」「Movicle」は、それぞれの特長を持っているのでしょうか。
担当者 LUUPが他社を大きく引き離している理由は、他サービスよりも知名度が高いことが挙げられるでしょう。また、基本料金が50円で、1分ごとに15円加算という安い料金設定も利用者が多い理由だと考えられます。
ドコモ・バイクシェアは、乗りたい時に借りて行きたい場所で返すがウリで、都市部を中心に全国58地区でサービスを提供しています。ポート数は合計で3770か所(2024年7月時点)あり、利便性が高いことが強みです。
Limeは米国に本社があり、世界280都市でシェアサービスを展開する世界最大手です。2024年8月に日本でサービスを開始、業界注目の的です。座って乗る「電動シートボード」も国内初に投入しました。
Movicleは、東京都初の電動キックボードシェアサービスです。安定して法定速度の30キロで走行できる電動キックボードを提供、駅から10分以上かからラストワンマイル(1.6キロ)の利用者をターゲットにしています。
安全性を解決すれば、環境意識が高い若者に広がる
――なるほど。それぞれ特長があるのですね。今後サービス業界の展開はどうなるでしょうか。
担当者 都市部を中心にさらなる普及が期待されますが、普及の課題として認知向上が挙げられます。自治体や観光業界との連携が進むなかで、企業間競争によるサービスの質の向上も予測されます。
しかし、世間から安全性への懸念や利用者の交通マナーについて疑念があることも事実です。こうした問題を克服できれば、マイクロモビリティーは重要な交通インフラの役割を果たす存在として成長していくでしょう。
――たしかにマナー違反や安全性の問題が、よくニュースで取りあげられますね。今回の調査で特に強調したい点はありますか。
担当者 そのとおりです。安全性への懸念が根強いため、普及をさらに進めるには、ヘルメット着用とか、免許証が必要とか、利用者に向けた交通ルールの周知徹底とともに法整備、専用レーンの整備といったインフラの充実が急務といえるでしょう。
調査で注目したいのは、利用理由の第3位に「環境に配慮した乗り物である」がランクインした点です。特に20代~30代では第1位に挙げられました。これは、環境意識の高い世代がマイクロモビリティーに魅力を感じていることを示しています。
利便性に加えて安心して利用できる仕組みを構築することで、幅広い層に支持される移動手段として成長が期待されます。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)