若手営業職の3人に2人が「将来の転職考える」 背景に「ザ・モデル型」による過度な効率追求も

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   営業職といえば「泥臭くてやりたくない」と敬遠する人がいる一方、いちどスキルを身につければ「つぶしがきき長く働ける仕事」とも思われている。しかし、現実に働く若手の営業ビジネスパーソンからは、将来性に対する不安の声が漏れているという。

   ある調査で20~30代の現役営業職に、現職のキャリアで何に最も不安を感じるか尋ねたところ、「身につけたスキルが今後も役立つのか」と答えた人が24.1%と最多となり、次いで「やりがいや情熱を感じない」が21.2%、「今の仕事が長く続けられるのか」が19.9%という意外な結果となっている。

  • 若手営業職の不安は?
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  • 現職のキャリアで最も不安を感じることは?(エムエム総研調べ)
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  • 将来の転職を検討しているか?(エムエム総研調べ)
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募る不満「給与が見合わない」「キャリアアップが見込めない」

   この調査は、エムエム総研がインターネット調査で1,003人から回答を得たもの。回答者のうち、現職が1社目と答えた人は37.3%で、6割を超える回答者が2社目以上。20~30代で早くも3社目以上の人が25.1%もおり、転職者の多さが目を引く。

   「身につけたスキルが今後も役立つのか」という不安をあげた30代男性は「将来的にキャリアアップを考えているが、今やっている仕事がそこで使えるのか不安」とコメント。「やりがいや情熱を感じない」と答えた30代女性は「行動がルーティン化してしまっているから」とその理由を付け加えている。

   将来の転職を「考えている」と答えた人も66.9%にのぼる。この回答者に転職を考えるきっかけを聞いたところ「給与や待遇や将来の目標に見合わないと感じた」が45.9%、次いで「現職ではキャリアアップが見込めないと判断した」の25.3%、「仕事に対するやりがいやモチベーションが薄れた」が20.4%と続いている。

   この結果について、あるSaaS企業で営業マネージャーを経験したAさんは「分かります。身につまされますね」と共感を示し、理由についてこう説明する。

「現代の営業はCRM(顧客管理システム)を中心にものすごく合理化されていて、営業プロセスを分解し、それぞれのステップごとに分担するタスクが明確に決まっています。『The Model(ザ・モデル)型』とも言うんですが、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスに分かれて、各ステップで目標数値をこなすことに専念しているんです」

   マーケティングの役割は「見込み客の獲得」、インサイドセールスは「見込み客の案件化」、外勤営業であるフィールドセールスは「案件の受注」、カスタマーサクセスは「取引の維持」や「追加取引の獲得」になる。

   この方法を採ることで、各部門の専門性や生産性の向上が見込まれ、どのプロセスにどんな課題があるのかがすぐ分かるようになる。その一方で、それまでの営業にはなかった問題が起きやすくなっているというのだ。

タスクを分割しすぎると「汎用スキルも身につきにくい」

   Aさんは、調査で「身につけたスキルが今後も役立つのか」と答えた人が最多となった理由について、こうコメントする。

「ようするに、ザ・モデル型では、営業職が歯車のひとつになっているので、自分ひとりでは何もできなくなるんです。仮にインサイドセールスの専門家になったとしても、前工程のマーケティングや後工程の外勤営業がいないと仕事にならない。仕事の全体像を見渡せなくなると、チームの成果に貢献している実感が薄まるし、他社でも通用する営業職としての自信を持ちにくくなります」

   「やりがいや情熱を感じない」という不安を抱える人が多かった理由も同様だ。

「『行動がルーティン化してしまっているから』というコメントがありましたが、まさにそういうことです。決まったタスクをひたすら繰り返し、仕事がどんどんルーティン化していけば、仕事に対する情熱が薄れがちになります。汎用スキルも身につきにくいので、転職市場で評価される力が得られないという感覚になるのです」

   転職したい理由に「給与や待遇や将来の目標に見合わない」「現職ではキャリアアップが見込めない」と答えた人が多い理由も、やはりザ・モデル型が関係しているのではないかという。

「生産性を極限まで高めても、その手柄は仕組みを作った人やマネジメントを担う人に取り上げられがちで、一生懸命やっても評価がされにくい。高い目標を達成し続けても、なかなか高い評価をもらえない。キャリアアップを考えれば、それまでの経験が活かせてより高い給与がもらえる会社に転職するしかなくなり、その不満が転職したい理由にもあらわれています」

   問題の解決策として、Aさんは社内でのジョブローテーションはどうかと提案する。異なるプロセスを担う部門間での人事交流を増やすことで、マンネリ化を防ぎ、スキルの幅を広げられるのではないかというのだ。

「会社としては、ルーティンに飽きたらなくなった人には辞めてもらうのが都合がいいのかもしれませんが、それではあまりにも使い捨てです。複数の部門を経験することでプロセス間のコミュニケーションを改善することもできますし、生産性が向上すればスタッフにも還元するようにしてあげればモチベーションも上がる。そんな形で仕組みをブラッシュアップすればいいんじゃないですかね」
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