人手不足が深刻化するなか、従業員に新しいスキルを身につけさせる再教育(リスキリング)の重要性が増している。
しかし、帝国データバンクが2024年11月20日に発表した「リスキリングに関する企業の意識調査(2024年)」によると、取り組んでいる企業は8.9%にとどまることがわかった。
いったいなぜ進まないのか。調査担当者に聞いた。
対応する時間、対応できる人材、お金がない
リスキリングとは「新しい職業に就くために、あるいは今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得させる」再教育のことだ。
「人への投資」を進めるため、2022年に政府の「骨太の方針」に盛り込まれ、岸田文雄前首相もリスキリング支援として5年間で1兆円を投じると表明していた。
帝国データバンクの調査(2024年10月18日~31日)は全国1万1133社が対象だ。リスキリングの取り組む状況を聞くと、「取り組んでいる」企業は8.9%にとどまり、今後「取り組みたいと思う」企業は17.2%で、リスキリングに「積極的」な意欲を示した企業は26.1%だった【図表1】。
取り組んでいる企業を業種別にみると、デジタル人材として高度なITスキルが求められる「情報サービス」(20.5%)と、行員に対するデジタル教育が活発化してきた「金融」(19.5%)が突出して高かった【図表2】。
大半が消極的な現状が浮き彫りとなったわけだが、その理由を聞くと、「やりたいことは山ほどあるが、人材不足が足を引っ張っている」「対応する時間が確保できない」「対応できる人材がいない」など、時間・人材・ノウハウ・費用などのリソース不足が課題となっていた【図表3】。
一方、取り組んでいる企業でも、「明確な目的と達成目標がないまま行ってもモチベーションは下がるだけで、成果は望めない」と、従業員のモチベーション維持が難しいとの声が聞かれた。また、多くの企業から「せっかく新しい技術を習得させても、他の会社に転職されては元も子もない」という懸念の声が相次いでいる。