代表作「二十億光年の孤独」やアニメ「鉄腕アトム」の主題歌など、大人から子供まで多くの人に親しまれた詩人、谷川俊太郎(たにかわ・しゅんたろう)さんが2024年11月13日に老衰のため亡くなっていたことが分かった。92歳だった。最後の詩では「感謝の念だけが残る」と書いていた。
ひらがなの可能性を追求
1931年、哲学者・谷川徹三の長男として東京で生まれた。52年に第1詩集「二十億光年の孤独」で鮮烈なデビュー。
宇宙的なスケールを持つ新しい感性の詩人として注目を集めた。その後も多種多様な作品を発表。読売文学賞、萩原朔太郎賞、三好達治賞、朝日賞などを受賞した。
このほか多数の作詞、絵本、エッセー、翻訳も手がけた。とくに、ひらがなの可能性を深く追求したことでも知られ、「ことばあそびうた」は有名。
教科書にも、「生きる」、「朝のリレー」などの作品が取り上げられた。翻訳では、「マザー・グースのうた」やスヌーピーとチャーリー・ブラウンが人気の漫画「ピーナッツ」シリーズ、絵本「スイミー」などで子供の世界に寄り添った。大人が読んでも心にしみる作品を多く手掛けた。
没後に最後の詩
谷川さんは老境に入ってから毎月一回、朝日新聞で「どこからか言葉が」という書きおろしの詩を連載していた。最終回は、亡くなった後の11月17日に掲載された「感謝」というタイトルの詩だった。
「目が覚める
庭の紅葉が見える
昨日を思い出す
まだ生きてるんだ」
という書き出しで始まり、最後は、
「感謝の念だけは残る」
という言葉で結ばれていた。
谷川さんは3回結婚し、3回離婚した。3人目の妻は「100万回生きたねこ」で知られる作家の佐野洋子さん。