この冬休み期間から、「青春18きっぷ」の仕様が大きく変更される。
かいつまんで説明すると、「5回分1枚」から「5日間連続」もしくは「3日間連続」になり、1人でしか使えなくなる。使用する日もあらかじめ決めておく必要がある。しかし、自動改札機に対応するようになる。
大きな変化ゆえ、SNSなどではハレーションはすごい。
JR側の説明からすると、有人改札での対応を減らすために自動改札機対応にし、その関係で仕様変更をしたということである。
仕方がない。仕方がない、のだが......。
なんでもかんでも自動化
たしかに有人改札は減っており、しかも大きな駅では利用者対応で混雑していることが多い。インバウンド観光客が有人改札に並んでいるところをよく見る。その状況の中で、「青春18きっぷ」に日付入りのスタンプを押すことや、駅から出るときの確認などをするのは手間である。
JR各社は、人手不足もあり、なんでもかんでも自動化しようとしている。「みどりの窓口」はどんどん減らされ、「指定席券売機」や、あるいは「えきねっと」などのインターネット予約システムを使用するようにと呼びかけている。
改札はあっても有人対応はしておらず、自動改札のみというところもよく見かける。ホームドアなどは、安全対応の駅係員を減らすためにも実は有効である。ワンマン運転の区間は増え、乗務員までも減らすことになった。
「青春18きっぷ」の大規模仕様変更も、そういった流れの中で対人サービスをどう減らすかを考えた上でのことといえる。
それゆえにこれまでの利便性を犠牲にしてきた。
「1日券5枚」の時代もあった
1982年3月に「青春18のびのびきっぷ」として誕生。83年春から「青春18きっぷ」に名称変更し、今日に至る。当初は2日連続券と1日券数枚という組み合わせだったものの、84年夏から1日券5枚というものになった。
当然ながら、金券ショップでのばら売りが問題になった。この対応のために、96年春から5回分1枚になった。ただ、2日使用と3日使用を組み合わせたり、期間内なら5日連続しない日に使用したりすることも可能だった。なお、それでも数回使用したものを金券ショップに売る人は、いたのだが......。
もっとも、鉄道のほうの事情も変わっていった。
夜行長距離普通・快速列車は姿を消した
「青春18きっぷ」ができた当初は、各地に長距離を走る普通列車が残っていた。客車列車の場合もあった。
夜行の普通列車を使用すると、長距離を格安で移動することができるようになり、お得感は大きいものがあった。
特急や急行に使用されていた車両を改造した普通列車や、深夜帯を走る長距離夜行列車などが多く存在し、時間はかかるけど快適に長距離を移動できた。
JRになると、各地で夜行の座席指定快速列車が運行され、格安の座席指定券を買えば「青春18きっぷ」で乗ることが可能だった。「ムーンライト九州」など、「青春18きっぷ」の時期に合わせた快速列車もあった。
いまは、こういった列車はもうない。しかも、地方の普通列車は、運行区間が短くなっていった。
さらに、整備新幹線が各地に延伸したことにあわせて、並行在来線が第三セクター化された。きっぷの値段は変わらず、「ステルス値上げ」のような状態になった。
「青春18きっぷ」ができたときから、大きく事情が変わっていった。「昔は大垣行きの夜行列車などを利用したよなあ」と思い出す人も多いと思われる。そういう列車は「青春18きっぷ」の利用者にとって便利だった。
5日の連続した休みを取れるか
リニューアルした「青春18きっぷ」は、3日もしくは5日連続というしばりがある。これなら、せめて夜行の普通・快速列車があればと思うものの、いまはない。移動しながらホテルなどに泊まっていくしかない。2泊3日、もしくは4泊5日の旅となる。
シャワーのあるネットカフェなどに泊まり続ける、というのはあまりにもきつすぎる。格安のビジネスホテルは、いまは人気が高く、予約が取りにくい。コロナ禍終了後多くの人が各地に行くようになり、宿泊施設の確保が難しくなっている現状がある。かなり計画的に利用しなければならなくなっている。
3日ならともかく、5日の連続した休みを取れるか、という課題もある。
難題だ。
「青春18きっぷ」をめぐる状況は、変わり続けている。その上でどんどん使いにくくなっている。
「青春18きっぷ」の使い方を考えるのは、かなりの難問になってしまった。(小林拓矢)
筆者プロフィール
こばやし・たくや/1979年山梨県甲府市生まれ。鉄道などを中心にフリーライターとして執筆活動を行っている。著書『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)、『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。