年功序列の「給与テーブル」がボトルネックに
しかし、この構造はまもなく限界を迎えるとAさんは見ている。大学進学率がこれ以上高くなることは考えにくく、一方で18歳人口の減少はさらに加速していくからだ。
「現在でも、大卒生に占める保健系やスポーツ科学などの卒業生の割合が高まり、ホワイトカラーの採用ターゲットとなる卒業生は減っているのが現実です。進学率の上昇による質の問題を指摘する人もおり、新卒採用をこれ以上増やすのは難しいと考える採用担当者は少なくありません。とはいえ、中途採用を簡単に増やせるわけでもなく、密かに悩みを募らせているわけです」
Aさんによると「JTCがキャリア採用に苦労する理由」は、待遇面の問題が最も大きいという。日本の伝統的大企業は終身雇用・年功序列を前提に、新卒から少しずつ昇格・昇給するための細かな「給与テーブル」を設けている。
中途採用を行うためには、そのテーブルのどの等級として扱うかが問題になる。通常は学歴や年齢から、既存社員の「年次」に合わせることになるが、他社で活躍してきた専門性の高い人材にとって、あまりにも低い待遇になることが多い。
「JTCは将来は上がっていくという見込みの中で働いているので、若手から中堅のうちは給与が低く抑えられています。一方の外資系コンサル会社などは、バリバリ働く若手にはずっと高い給与を提示してくるし、自社株を報酬として付与する制度もあって、まったく歯が立ちません」
かといって、給与テーブルをそのままに、中途入社組だけを厚遇しようとすれば「これまで我慢して勤めてきたのが馬鹿らしくなる」と既存社員のモチベーションを下げてしまう。
このようなボトルネックを解消するために、NECや富士通などキャリア採用を積極化する会社では、職責の重さに応じて処遇する「ジョブ型人材マネジメント」に移行している。
年功的な給与テーブルがなくなれば、中途入社組にも年齢に関係なく専門性に応じた給与を支払うことができる。