コロナ禍からの経済回復や慢性的な人材不足を背景に、中途採用を強化する企業が増加しています。特に、20~30代をターゲットに、リーダーやマネージャーを担う人材として期待する企業も見られます。
働く個人にとってはキャリアの選択肢が増えた一方、自分に合った会社を見つけることに悩む方も多いのではないでしょうか。
企業のクチコミが豊富なOpenWork(オープンワーク)の会社評価レポートをもとに、今回は20~30代の中途入社者が「風通しの良さ」を評価する企業を調査。高く評価された企業の特徴や共通点とはなんでしょうか。社員クチコミとあわせて、深掘りしていきます。
中途入社した若手が感じた「風通しの良さ」とは
2020年以降に中途入社した、20~30代の現職社員による回答から「風通しの良さ」スコア(5点満点)が高い企業でランキングを作成しました。その結果、1位は外資系IT企業のヴイエムウェアという結果になりました。
このTOP10社は、実は「風通しの良さ」以外のスコアを見ると、「社員の相互尊重」、「20代成長環境」も高い傾向が分かりました。
しかも、ランクイン企業に寄せられたクチコミからは、企業が大切にしている価値観や姿勢をもとに社員同士がコミュニケーションをとっている様子や、同じ目標に向かって切磋琢磨して成長できる環境であることがうかがえます。
厚生労働省の発表(※)によると、人間関係がうまくいかなかったことによる退職理由は男性で9.1%、女性で13.0%となっており、社員間の円滑なコミュニケーションは会社選びにおいて重要といえるでしょう。(※)厚生労働省「令和5年雇用動向調査結果の概況」より
具体的に、ランクイン企業には、組織体制・企業文化に関して、次のようなクチコミが寄せられています。
・基本的にオープンな社風。ただし自分で行動を起こすようなプロアクティブさが求められる。海外とのやりとりもフラットにできる風通しの良さは非常に素晴らしいと思う。(エンジニア、ヴイエムウェア)
・世界各国からトップレベルのバックグラウンドを持った人材が集まっており、非常に素晴らしい環境で働くことが出来る。他者を尊重し、どのように良いコラボレーションが出来るかをみな重視している。(マーケティング、グーグル)
・手を挙げれば打席に立つことができる。新たなことにチャレンジする人を応援する文化がある。社内の風通しはよく、上下関係や部門にかかわらずコミュニケーションがとりやすい。(営業、エージェント)
・営業会社のような個人同士のバチバチ感はなく、グループやチームで同じ目標に向かって頑張る雰囲気があります。マネージャーやリーダーとの距離感も近く、自分の意見はすぐに伝えられる環境があります。(カスタマーサクセス、タイミー)
・社員はみな人柄がよく、明るく、健やかな人が多いです。成長に対する意志はみな高く、毎期上司と話して決めたステップアップの目標を定量・定性の両面から、達成を目指します。(メンバー、Plan・Do・See)
中途採用で重視されるのは「人柄」と「相性」
一方で、採用側の企業はどのような視点を持って、中途採用を進めているのか。私、オープンワーク マッチング事業部の和田大生(わだ・ひろお)が解説していきましょう。
近年、企業が中途採用で重視するポイントは大きく変わりつつあります。
以前は、スキルや知識の専門性が重視されていました。ところが現在では、「人柄」や「コミュニケーション能力」が自社に合っているかどうかも重要視されています。なぜなら、企業文化やチームとの相性が、業績や組織の活性化に大きな影響を与えるからです。
実際、私が採用を支援するお客様の中には、スキルや知識の専門性が高い候補者であっても、人柄や価値観が社内風土や既存社員とマッチしない場合、採用しないと判断する企業もあります。
それは、採用したあとも長く活躍してほしいと考えているため。いかにチームに馴染めるか、目の前の仕事や組織に対して愛着を持ってもらえるか、その見極めには力を入れています。
企業にとっては、「人的資本経営」の重要性が高まる中、このような取り組みがミスマッチによる早期離職を防ぎ、結果的に採用コストの削減や中長期的な社員の活躍、チームの活性化を促進するのではないでしょうか。
働く個人もまた、自身の意見が尊重され、オープンにコミュニケーションができる環境であれば、より成長を実感できるようになります。
ですから、企業を選ぶ際には提示された年収や企業の規模だけでなく、自分が働く上で大切にしたい価値観をしっかり理解し、職場のハード(待遇や条件)とソフト(社風や文化)の両面をバランスよく考えることをおススめします。
【プロフィール】
和田大生(わだ・ひろお)
オープンワーク株式会社 マッチング事業部 企業コンサルティングユニット キャリア採用グループ
大学卒業後、2021年にオープンワーク入社。リクルーティングコンサルタントとして、一貫して大手総合コンサルファームや日系大手メーカー、テック系ベンチャー企業などの中途採用を支援する。現在はメンバーマネジメントや自社採用なども奮闘中。