感情を抑えきれなかったのだろう。試合後は端正なマスクをクシャクシャにして涙を流した。
慶大・清原正吾が2024年11月10日の早大2回戦で、4回に同点打を演出する内野安打。9回はフルスイングで空振り三振に倒れ、大学最終戦は4打数1安打に終わった。
父親譲りで大舞台に強い
偉大なスラッガー・清原和博氏を父親にもち、中学と高校の6年間は野球から離れていた。だが、大学から野球を再開すると、成長速度は目を見張るものがあった。
4年春から「4番・一塁」を勝ち取り、ベストナインを受賞。リーグ戦はノーアーチだったが、4年秋に3本塁打を放った。
プロ志望届を提出してドラフトで指名漏れの挫折を味わったが、その後も慶大の4番としての重責をまっとうした。
2万6000人の観客が詰めかけた11月9日の早慶戦1回戦で、6回に左翼席中段に叩きこんだ。
打った瞬間に本塁打と分かる完璧な打球に、スタンドは地鳴りのように揺れた。ダイヤモンドを一周する際に、スタンドで観戦した和博氏に人差し指を指しながら雄叫びを上げた。
ド派手なアーチだけではない。4打数4安打の大暴れ。父親譲りで大舞台に強い。9-1の圧勝劇に大きく貢献した。
「まだまだ伸びしろがある」
NPBの球団から指名はなかったが、独立リーグやファームに新規参入している球団から獲得のオファーが殺到している。
清原は卒業後の進路について未定であることを明かし、野球以外の道を含めてこれから熟考することが報じられている。
独立リーグの関係者は
「清原君の人生です。彼の決断を尊重するべきだけど、これだけの潜在能力を持った選手が野球を辞めるのはもったいない。まだまだ伸びしろがあるし、プレーしてほしい」
と訴える。
清原の野球人生は今後も続くか。悩み抜いた末の結論が注目される。(中町顕吾)