韓国の大韓航空とアシアナ航空の統合をめぐる動きが最終段階に入ったようだ。
大韓航空は2020年11月にアシアナ航空の買収計画を発表し、各国の競争当局は競争上の問題がないか審査を続けてきた。日本はすでに計画を承認し、EUも条件付きで承認。韓国メディアは、24年11月初旬にもEUが最終的に承認し、残る米国当局も追随する形で承認するとの見通しを伝えている。
大韓航空側は、買収が成立すれば「世界の航空会社でトップ10にランクインする」と主張している。日本の空はどんな影響を受けるのか。10月31日に開かれたANAホールディングス(HD)の決算会見で芝田浩二社長が言及する場面があった。
日本では7路線で「競争を実質的に制限」→発着枠一部譲渡で解決
20年の大韓航空側の発表によると、買収は「新型コロナの大流行で苦しんでいる韓国の航空業界を安定させるため」に計画され、買収が完了すれば、新会社は「世界の航空会社でトップ10にランクインすると予想される」と説明。次のように買収の意義を強調していた。
「一般的に、人口1億人未満の国には(格安航空会社=LCCではない)フルサービスキャリア(FSC)が1社しかない。しかし、韓国はFSCを2社抱えているため、ドイツ、フランス、シンガポールのように主要航空会社が1社の国に比べて競争上不利だ。しかし、大韓航空による買収と路線、機材、輸送能力の拡大によって、大韓航空に世界のメガ・エアラインに対抗する競争力が与えられるだろう」
審査の過程では、大韓航空は様々な対応を迫られてもいる。
例えば日本の場合は、大韓航空とアシアナ航空の両方が乗り入れているのは10路線。単純に両者のシェアを足すと、そのうち7路線(大阪-ソウル、札幌-ソウル、名古屋-ソウル、福岡-ソウル、大阪-釜山、札幌-釜山、福岡-釜山)についてシェアが50%を超えるなどとして、競争が実質的に制限されると公正取引委員会が指摘した。大韓航空が7路線について発着枠の一部を他社に譲ることを表明し、公取は競争環境が維持できると判断した。
EUについては、欧州の4路線を系列外のLCC、ティーウェイ航空に移管し(編注:大韓航空傘下のLCCとしてジンエアーが知られている)、アシアナ航空の貨物事業を売却することで最終的な承認が得られる見通しだ。
中央日報が11月2日に報じたところによると、最終的な承認が得られれば、大韓航空は「12月20日までにアシアナ航空の株式を取得し、アシアナ航空を子会社に編入」する。「約2年間『1社2ブランド』で運営する計画」とも報じている。
さらに、ソウル経済新聞は11月2日、「合併後のマイレージ政策の具体的な方向性は決まっていないことが分かった」と報じており、乗客への影響は見通せない部分も依然として多い。
問われる羽田&成田のハブ機能
ANA HDの芝田社長は10月31日の決算会見で、両社をめぐる動向について「本当にずっと注意深く見ている」とした上で、ネットワークが拡大することで「強力なライバル」が誕生するとの見方を示した。
「航空会社の力のひとつは、やっぱりネットワーク。規模の力というのが結構大きいと思っているので、その観点で言うと、KE(大韓航空)とOZ(アシアナ航空)の統合は強力なライバルの誕生かな、と思っている」
さらに、アジア-日本-北米の乗り継ぎ需要が影響を受ける可能性を指摘。羽田空港や成田空港のハブ機能の強化が必要だとした。
「加えて、これからの流動の大きな流れのひとつは、アジアと北米をつなぐ流動だと思う。そうすると、仁川空港のハブ機能としての力というものが、ますます高まる。それに対抗するには、日本も羽田なり成田なり、こちらのハブ機能の充実というのは、国益の観点からも避けて通れない。これは私どももそうだし、航空会社、空港会社、あるいは国を挙げてしっかり整備をしていきたい」
(J-CASTニュース編集委員 兼 副編集長 工藤博司)