空き時間に単発で働く「スポットワーク」(スキマバイト)が急速に浸透している。ピンポイントで人手を確保したい企業と、すきま時間に稼ぎたい人を即座にマッチングするスポットワークサービスが広がっている。
モバイル専門の市場調査を行うMMD研究所(運営元はMMDLabo、東京都港区)が2024年10月22日に発表した「スポットワークに関する調査」によると、利用経験は約12%だが、知っている人が半数を超えた。
どこのサービスが人気なのか。また、問題点はないのか。調査担当者に聞いた。
利用者は10代~30代の若い男性が多い
スポットワークは数時間単位で働く1回限りのアルバイト。企業や店舗は、人手がほしい時間帯にピンポイントで求人を出し、働く人は、自分の空き時間にできる仕事をアプリ上で選び、雇用契約を結ぶ。面接といった面倒な手続きはなく、報酬はすぐに振り込まれるケースが大半だ。
MMD研究所の調査(2024年9月18日~19日)は、スマホを所有している18歳~69歳の男女7000人に予備調査を行ない、スポットワーク利用経験者500人を抽出、詳しく本調査を行なった。
7000人を対象に「スポットワークを知っているか」と「利用しているか」を聞くと、「知っている」(認知)は全体で54.5%、また、「利用経験」は11.8%となった。これを性年代別で見ると、「認知」「利用経験」ともに10代~30代の若い層が高く、利用経験は男性のほうが多い【図表1】。
予備調査から抽出した利用経験者500人を対象に、利用したことがあるスポットワークサービス(複数回答可)と現在メインで利用しているサービスを聞いた結果が【図表2】だ。ともに「タイミー」がダントツの1位で、次いで「シェアフル」「LINEスキマニ」と続く。
利用経験者にサービスで追加してほしい機能を聞くと(複数回答可)、「口座登録不要で、決済サービスで支払われる」「口座登録不要で、手渡しで支払われる」「スケジュールの自動調整機能」などが上位に並んだ【図表3】。こうした機能が付いていれば、もっと便利になるのにというわけだ。
また、サービスを選ぶ際に重視していることを聞くと(複数回答可)、「勤務時間の柔軟性」が最も多く、「求人の多さ」「即日払いがある」などが続いた【図表4】。
さて、みんな1回でどのくらいの時間を働いているのか。平均業務時間を聞くと、「2時間以上3時間未満」(21.2%)が最も多く、次いで「3時間以上4時間未満」(20.0%)、「4時間以上5時間未満」(17.6%)となった。全員の平均時間を算出すると「4時間1分」となった【図表5】。
トップ4の「タイミー」「シェアフル」「LINEスキマニ」「メルカリ ハロ」の特長
J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を行なったMMD研究所の担当者の話を聞いた。
――今回の調査では、認知は約54%ですが、利用経験は12%です。率直に言って、スポットワークはかなり広がっているとみていますか。それとも、まだまだだという感じでしょうか。
担当者 最近、シニア層の利用者増加がニュースで話題になっていますが、今回の調査では全体の利用経験者は約12%で、年齢が上がるほど利用経験が減少しています。シニアの60代男女の利用も約4%にとどまっています。認知は広がりつつありますが、利用の定着はまだ途上と考えられます。
――たしかにシニアが少ないですね。現在70代の私からすると、暇な時間をもてあましている60代以降は多いので、もっと利用してもいいのではないかと思いましたが、20代、30代が多いですね。ということは、本業の合間に「副業」でやっている人が多いということですか。
担当者 「副業」でやっている人が多いと考えられます。理由としては、スポットワークでの1回の平均業務時間が「2~4時間」がボリュームゾーンであることや、サービスを選ぶ際に重視していることでも「勤務時間の柔軟性」がトップにきていますから。
本業の合間の少ない時間を見つけ、空いた時に活用して稼いでいる人が多いと考えられます。
――利用しているサービスのランキングを見ると、トップ4に「タイミー」「シェアフル」「LINEスキマニ」「メルカリ ハロ」がランクインしています。それぞれのどんな特長や違いがあるのでしょうか。
担当者 「タイミー」の特徴は、飲食系や小売業・物流系を中心に、オフィスワークやイベント系など幅広い職種に対応しています。初心者でも取り組みやすい簡易的な作業から、保育士・歯科助手といったスキルや資格を要する専門職まで募集が可能です。これらを踏まえて、業界大手なため、掲載数が多いことが強みです。
「シェアフル」の特徴は、「シェアフルmembers」になると、シェアフルを使えば使うほどポイントがたまり、さまざまなPayに交換できるサービスがあります。シェアフル使って就業が完了すると、その度にポイントが獲得できるし、働いてポイントがたまる以外にも、歩いた歩数やスクラッチくじでもたまり、居酒屋やレストランなどで使えるクーポンが配信されます。
「LINEスキマニ」の特徴は、LINEで好条件の求人情報を速やかに受け取れるところです。日常的に利用しているLINEのインターフェースをそのまま活用できるため、求人・勤怠管理・給与支払までワンストップで完結するため、ユーザーにとっては非常に操作が簡単で親しみやすいです。
「メルカリ ハロ」の特徴は、登録時の本人確認にマイナンバーカードを使って簡単にできることです。
厚生労働省が違法性を警告した「アプリ禁止」システム
――それぞれ特徴があるのですね。ところで、【図表3】では利用経験者がサービスに対して、「口座登録不要で、決済サービスで給与が支払われる」といった機能などの追加を望んでいます。
素早い支払いを望む要望が多いですが、なぜ、こうした機能を望むのでしょうか。利用したことがない人にもわかるよう説明してください。
担当者 先ほど「副業でやっている人が多い」と述べましたが、サービスの利用頻度を見ると、「半年に1回以下」(17.2%)が最も多く、次いで「週に1回程度」(17.0%)、「月に2回~3回程度」(16.4%)と続きます。つまり、半数以上が「週に1回以下」なのです。
このことから、スポットワークは定期的に利用されるのではなく、突発的に利用される「副業」だと考えられます。突発的な「副業」では、急な出費を補填する必要に迫られるなどの利用が考えられるため、このような結果になったのではないかと思います。
――なるほど。こうしたサービスに問題点はないのでしょうか。サービスの中には、無断で仕事をキャンセルした利用者に二度とアプリを使えないようにするシステムがあるとして、今年(2024年)10月、厚生労働省がサービス事業者に対し、職業安定法に違反すると警告する通達を出しました。
担当者 無断キャンセルを行った利用者に対してアプリの利用を禁止するシステムに対して、厚生労働省が違法性を指摘し警告を行った件について承知しております。このような事例が報道されていることからも、今後は法的な整備がさらに進められるべき課題があると認識しています。
今後の課題は「給料デジタル払い」でスポットワークを!
――今後、スポットワークサービス業界はどうなっていくでしょうか。
担当者 業界最大手の「タイミー」が今年7月に東証グロース市場に上場を果たしました。また、10月には人材サービスのディップが業界に参入、「スポットバイトル」を開始して日本初のボーナス制度を取り入れています。
今後、厚生労働省などの指導のもと法整備が進み、さらにボーナス制度などそれぞれが差別化を図り、サービスの利便性や競争力が一層高まることが期待されます。
そこで強調したいことは、「サービスで追加してほしい機能」として、利用経験者は今年9月から始まった「給料デジタル払い」を希望している人が多いことがわかりました。スポットワークに「給料デジタル払い」がどう組み込まれていくのか、注目していきたいです。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)