体育会運動部の学生アスリートは「半径5メートルの就活」 就活の全プロセスで部の先輩・仲間が関与...悩みは?

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   多くの一般学生が就職活動中も、競技生活に打ち込んでいる大学体育会運動部の学生アスリート。

   企業の情報収集や入社先の決定まで、就活の各段階で運動部の先輩や同期に頼る「半径5メートルの就活」を行なっていることが、電通が2024年10月1日に発表した「学生アスリート 就活まるわかり調査」で明らかになった。

   部の支援がある点で、一般就活生にはうらやましくもみえるが、じつは悩みがあるという。調査担当者に聞いた。

  • 学生アスリートは、一般学生の就活中にも練習に打ち込む者が多い(写真はイメージ)
    学生アスリートは、一般学生の就活中にも練習に打ち込む者が多い(写真はイメージ)
  • (図表1)入社先で昇進や出世をしたいと思うか(電通 採用ブランディングエキスパート作成)
    (図表1)入社先で昇進や出世をしたいと思うか(電通 採用ブランディングエキスパート作成)
  • (図表2)部活動の引退時期は?(電通 採用ブランディングエキスパート作成)
    (図表2)部活動の引退時期は?(電通 採用ブランディングエキスパート作成)
  • (図表3)就活中に感じた悩み(電通 採用ブランディングエキスパート作成)
    (図表3)就活中に感じた悩み(電通 採用ブランディングエキスパート作成)
  • (図表4)就活中の各ステップで影響を及ぼした存在(電通 採用ブランディングエキスパート作成)
    (図表4)就活中の各ステップで影響を及ぼした存在(電通 採用ブランディングエキスパート作成)
  • 学生アスリートは、一般学生の就活中にも練習に打ち込む者が多い(写真はイメージ)
  • (図表1)入社先で昇進や出世をしたいと思うか(電通 採用ブランディングエキスパート作成)
  • (図表2)部活動の引退時期は?(電通 採用ブランディングエキスパート作成)
  • (図表3)就活中に感じた悩み(電通 採用ブランディングエキスパート作成)
  • (図表4)就活中の各ステップで影響を及ぼした存在(電通 採用ブランディングエキスパート作成)

「企業を知る」から「入社先決定」まで、相談相手は運動部先輩と仲間

   調査(2024年7月22日~8月5日)を行なったのは、電通で企業の人財採用におけるブランディングを支援するコンサルティングチーム「採用ブランディングエキスパート」。2024年または2025年卒業予定の体育会運動部所属の大学生・大学院生303人が対象だ。

   まず、「入社先で出世や昇進をしたいと思うか」を聞くと、学生アスリートの6割(59.1%)が「昇進や出世」に意欲を示している。一般の就活生(51.8%)よりかなり高い割合だ【図表1】。

   また、自身の性格や特徴に当てはまるものについて、「コミュニティー意識(自分の所属しているコミュニティーを大切にする)」や「競争心・向上心(目標達成には努力を惜しまない)」「勤勉さ・継続力(こつこつと努力を継続することができる)」などが上位に並んだ。

   学生アスリートの多くは、一般的な就活期間中も競技活動に打ち込んでおり、部活動の引退時期が遅い。

   調査によると、「4年生の11~3月」が49.8%、「4年生の4~10月」が26.7%と、8割(76.5%)は就活が本格化する4年生まで競技を継続している。また、7割(70.3%)が「週5日以上」部活動に参加している【図表2】。

   このため、秋・冬の企業のインターンシップへの参加率が就活生全般と比較して約20ポイントも低い。

   こうした学生アスリートの就活中の主な悩みは何だろうか。

   具体的には、「何から始めればよいのか分からない」「自分自身のやりたい仕事・キャリアイメージが分からない」「自分に向いている仕事・職業が分からない」など、就活そのものやキャリア形成に関する項目が上位に並ぶ【図表3】。

   就活には、「入社決定」に至るまで多くのステップがあるが、学生アスリートは各段階で誰に相談しているのか。

   【図表4】が最も影響を及ぼした存在を聞いた結果だ。「企業の認知」「企業理解」「エントリー」「入社決定」の各ステップで、強い存在感を示したのはいずれも「部活動の先輩・同期」や「部活動の卒業生(OB・OG)」だった。

   就活生全般がゼミ・研究室の先輩や親・友人、各企業など各段階で多くの存在から影響を受けると違い、学生アスリートは部活動関係者から多くの情報を得ている。「半径5メートル(部室の中)の就活」といわれるゆえんだ。

   電通 採用ブランディングエキスパートでは、リポートの最後で、

「部活動の先輩・同期・卒業生の影響力が非常に大きく、企業の説明会での情報や親・親族の意見なども積極的に取り入れる就活生全般とは、情報収集方法が大きく異なる。
こうしたことが原因で、就活の最中、就活そのものやキャリア形成に関する根本的な悩みを感じ、企業とのミスマッチが生じる懸念がある。昇進や出世の意欲、向上心が高い学生アスリートのポテンシャルに期待する企業も多く、学生アスリートの実態を踏まえた採用活動が求められる」

と指摘している。

アスリート学生の就活は大変なのか? 一般学生よりはラクなのか?

   J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を行なった電通 採用ブランディングエキスパートの担当者から話を聞いた。

――アスリート学生たちが競技に打ち込みながら就活に悩む姿が浮き彫りになり、非常に興味深い調査です。

しかし、一般学生からみると、体育会運動部の学生は「部に入った段階でOBや監督から就職の面倒をみる約束をされているのではないか」とか「バイタリティーや組織への忠誠心が強い点から就職には有利ではないか」といったイメージがあります。

ズバリ聞きますが、今回の調査からはアスリート学生の就活は大変なのでしょうか? それとも一般学生よりはラクなのでしょうか?

担当者 すべての就活生が自身のキャリアに向きあい、それぞれの就職活動に取り組んでいます。それぞれの事情がありますので、ラクか・大変かの分析はそもそもできかねると思います。

「部活動の先輩・卒業生や監督が就職の面倒をみてくれる」や「バイタリティー・組織への貢献」など、従来の画一的なイメージも変えていく必要があると考えます。

オリンピック代表を目指すようなメジャー競技からマイナー競技まで、学生アスリートの活躍の場はさまざまで、所属するチームによっても事情は異なります。また、昨今は企業が求める人材像も多様化しています。

――学生アスリートにとって「企業の認知」から「入社決定」に至る各ステップで、いずれも部活動の先輩・同期が強く影響を及ぼす点で「半径5メートルの就活」というキーワードが非常に興味深いです。

これは運動部組織の結束力の援助を受けられる点で、就活が「半径5メートル以内ですむ」といもいえます。これは就活を行なうアスリート学生にとってプラスなのでしょうか、それともマイナスなのでしょうか。

担当者 プラスか、マイナスかの考察ではなく、そういった特性が見受けられることを理解することが重要と考えます。

就活に取り組む学生アスリートは、自身の情報収集・行動範囲が適切か、常に意識する必要があります。採用側は、学生アスリートが競技活動を通じてつちかった人的ネットワークの影響力を理解し、情報発信や接点創出の方法を考える必要があります。

学業と競技活動の両立の合間にも、自分のキャリアを真剣に考えよう

――リポートの最後で、「学生アスリートでは、就活そのものやキャリア形成に関する根本的な悩みを感じ、企業との間でミスマッチが生じる懸念がある」と指摘していますが、ここはどういうことでしょうか。

担当者 一般論としての考察になりますが、就職活動の全体工程を理解し、自身のキャリア展望・志望業界などを見据えたうえで、最終的な意思決定をしていくことによって納得感のある就職活動ができると考えると考えます。

――「半径5メートルの就活」から脱し、就活の各ステップで学生アスリートがよりふさわしいキャリア教育を得られるようにするには、学生自身および大学、運動部は具体的にどうすればいいでしょうか。学生アスリートへのアドバイスもお願いします。

担当者 今回の調査結果を踏まえると、就職活動が本格的に始まる前に、自身のキャリアについて考える時間が増えていくことが望ましいと考えます。

学生アスリートは、競技活動のオフシーズンなどを有効に活用し、早い段階から準備を始めるとよいでしょうし、大学・企業などもそうした学生アスリートの早期活動を支援していくことが期待されます。

学生アスリートの皆様は、学業と競技活動の両立に真剣に取り組まれており、就職活動に時間を割きにくいかもしれません。学生時代の就職活動は、今後のご自身のキャリアを考えるうえで非常に重要です。時間は限られるかもしれませんが、その中でご自身が納得できる形で就職活動に取り組んでいくことを応援しています。

企業は、部活オフシーズンの2年生1~3月にアプローチしては

――今回の調査で特に強調しておきたいことや、企業の人事担当者への要望はありますか。

担当者 今回の調査と分析は、あくまで学生アスリートと就活生全般の違いにフォーカスしたものになります。学生アスリートに限らず、学生全般が多種多様な経験を積んでいます。企業の採用活動では、学生の多様性を理解し尊重することが重要と考えます。

学生アスリートには、たとえば、部活動のオフシーズンで、かつ就活本格化前のタイミング(2年生の1~3月など)でのアプローチや、実際の業務内容やキャリアパスを具体的にイメージできるキャリア教育に近いコンテンツを準備し、接点を設けるなどの手法が効果的だと考えられます。

(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)

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