ベテラン社員「いまさら新しいやり方なんて無理」
女性社員の中には、定年後に嘱託として働いている人もおり「いまさら自分でデジタルツールに置き換えたり新しいやり方を覚えたりすることなんてムリ、と言われています」。
取引先との契約書は紙に出力してハンコを押し、棚にファイリングしている。取引先の一部からは「電子契約にしてほしい」と言われているが、「対応できない取引先に揃えるため」という表向きの理由で、いまだに紙の書類を郵便でやりとりしている。
アナログから脱却できない理由の2つ目は、営業担当の中高年男性社員だ。彼らは書類仕事を女性社員に任せきりで、口頭で依頼はするが自分で手を動かさない。
「例えば新たな契約書を作るときも、『◯◯さんのところの契約書を出してくれ』と口頭で言うだけ。それでベテランの女性社員が『これですね』と棚からファイルを出してくれる。それをコピーして品名などに赤字を入れて修正を頼めば、他の人がやってくれるんです。そうなると、そういうやり方をいまさら変えようという気も起こらないんです」
ただしAさんは、あと数年で「最後のバブル世代」が60歳になるタイミングに合わせて「業務の仕組み全体をデジタル化したり、アウトソーシングしたりする予定」という。それに合わせて、事務担当に派遣スタッフを受け入れる予定だ。
その一方で、Aさんの会社には業界再編の波が押し寄せており、売上高・利益とも右肩下がり。昨期は営業赤字となった。市場も縮小しており、それどころではなくなるかもしれない、と危惧する。
「そのころには同業他社と経営統合するとかして、会社の名前も変わっちゃって、事務員の心配もしなくてすむようになるかもしれないな、なんて思ってるんですけどね」