格安スマホ「シェア・満足度」調査の意外な結果 シェア最下位「日本通信SIM」が満足度ではダントツ1位 低料金競争さらに激化

全国の工務店を掲載し、最も多くの地域密着型工務店を紹介しています

   スマホにこだわりを持つ層に人気がある「格安スマホ」。利用者が一番多いのは、また、満足度が一番高いのはどこだろうか。

   モバイル専門の市場調査を行うMMD研究所(運営元はMMDLabo、東京都港区)が2024年10月15日に発表した「2024年9月MVNOのシェア・満足度調査」によると、総合満足度、顧客推奨度ともに「日本通信SIM」がダントツ1位になった。

   しかし、取りあげた7サービスの中ではシェアは一番低い。そのギャップはどこからくるのか。調査担当者に聞いた。

  • 格安スマホはどこのサービスの満足度が高い?
    格安スマホはどこのサービスの満足度が高い?
  • (図表1)格安スマホのシェアの推移(MMD研究所の作成)
    (図表1)格安スマホのシェアの推移(MMD研究所の作成)
  • (図表2)格安スマホの利用率の推移:2023年2月~2024年9月(MMD研究所の作成)
    (図表2)格安スマホの利用率の推移:2023年2月~2024年9月(MMD研究所の作成)
  • (図表3)格安スマホの総合満足度(MMD研究所の作成)
    (図表3)格安スマホの総合満足度(MMD研究所の作成)
  • (図表4)格安スマホの顧客推奨度(NPS)(MMD研究所の作成)
    (図表4)格安スマホの顧客推奨度(NPS)(MMD研究所の作成)
  • 格安スマホはどこのサービスの満足度が高い?
  • (図表1)格安スマホのシェアの推移(MMD研究所の作成)
  • (図表2)格安スマホの利用率の推移:2023年2月~2024年9月(MMD研究所の作成)
  • (図表3)格安スマホの総合満足度(MMD研究所の作成)
  • (図表4)格安スマホの顧客推奨度(NPS)(MMD研究所の作成)

シェア伸び率1、2位は「J:COM MOBILE」と「IIJmio」

   MMD研究所の調査(2024年9月13日~24日)は、スマホを所有している18歳~69歳の男女4万人を対象に予備調査が行われた。その後、主要な「MVNO」(格安スマホ)の7つのサービスのユーザー(150人ずつ計900人)に本調査が行われた。

   調査対象となったのは、「OCN モバイル ONE」(オー・シー・エヌ・モバイルワン)、「楽天モバイル(MVNO)」、「mineo」(マイネオ)、「IIJmio」(アイアイジェイミオ)、「イオンモバイル」、「J:COM MOBLIE」(ジェイコムモバイル)、「日本通信SIM」の7つだ。「OCN モバイル ONE」と「楽天モバイル(MVNO)」は新規受付を停止しているが、利用者シェアが上位に位置するため調査対象とした。

   まず、4万人のうち、通信契約しているスマホを所有している3万6643人に、メインで利用している通信サービスを聞くと、格安スマホを契約している割合は9.3%となった。格安スマホは2019年の13.23%をピークに2021年以降、9%台が続いている【図表1】。

   次に、格安スマホをメイン利用している3403人に聞いた主要7サービスの割合が【図表2】だ。「OCN モバイル ONE」(17.0%)が最も多く、次いで「mineo」(14.5%)、「IIJmio」(13.6%)の順となった。

   前回(2024年2月)とのシェアを比べると、「J:COM MOBILE」(1.8ポイント増)の伸び率が最も高く、次いで「IIJmio」(1.4ポイント増)、「mineo」(1.2ポイント増)が目立つ。新規契約を停止している「楽天モバイル(MVNO)」と「OCN モバイル ONE」の低下も際立つ。両サービスの低下分をほかの5サービスが分け合っているかたちだ【図表2】。

   予備調査から抽出した主要7サービス利用者1050人(各150人)に、総合満足度を聞いた結果が【図表3】だ。「満足度」を、「料金部門」(安さ)、「サービス部門」(オプションプランの豊富さ)、「通信品質部門」(つながりやすさ)、「顧客サポート部門」(サポート対応のよさ)の4部門で聞き、合計ポイント(1000満点)で「総合満足度」をランキングする。

   「日本通信SIM」(926点)とずば抜けて高く、次いで「mineo」(891点)、「IIJmio」と「OCN モバイル ON E」(885点)となった。

   綜合満足度とは別に、「顧客推奨度」(NPS:ネット・プロモーター・スコア)も聞いた。これは、家族や友人にお薦めしたいかどうかを10点満点の点数でつける。9~10点が推奨者、7~8点を中立者、0~6点を批判者とし、推奨者から批判者を引いたスコアで採点する。

   その結果、「日本通信SIM」(プラス5.3)と最も高く、次いで「mineo」(マイナス8.0)、「イオンモバイル」(マイナス14.7)の順となった【図表4】。

   「総合満足度」と「顧客推奨度」ともに「日本通信SIM」が圧倒的な1位になったわけだ。

大手の安いサブブランド攻勢に善戦する格安スマホ

   J‐CASTニュースBiz編集部は、MMD研究所の調査担当者に話を聞いた。

――新規受付を停止した「OCN モバイル ONE」と「楽天モバイル(MVNO)」もシェアが多いという理由で調査対象に入れていますが、そもそも両サービスが格安スマホ撤退した理由は何ですか。

調査担当者 「OCN モバイル ONE」はもともとNTTレゾナントが運営しており、2023年7月にNTTドコモに吸収合併されました。ドコモグループは吸収合併に伴う料金プランの見直しのため新料金プラン「irumo」に一本化する方向に動きました。

楽天モバイルは2014年に格安スマホ(MVNO)に参入しシェアを拡大しましたが、2019年に総務省より5Gの周波数が割り当てられ、10月に大手通信キャリア(MNO)のサービスを開始しました。MNOに集中することもあり、2020年4月にMVNOは新規受付が終了となりました。

――【図表1】の格安スマホのシェアの推移を見ると、2019年9月(13.2%)のピーク後、9%台で横ばい傾向が続いています。これは伸び悩んでいるか、それとも大手の安いサブブランド攻勢にも耐えて頑張っているのか、どちらでしょうか。

調査担当者 2020年に楽天モバイルがMNOに参入したことや、「UQ mobile」がKDDIのサブブランドへ移行したことなどで、シェアが低下したように見えた理由があります。シェアが高かった「OCN モバイル ONE」などが新規停止しているため、減少する要因があるなかで横ばい傾向ということは、ほかの格安スマホは増加しているので、善戦しているといえます。

「日本通信SIM」は、積極的に安い料金を打ち出す姿勢が高い評価

――各社とも具体的にどういう工夫や努力で善戦しているのでしょうか。特に「J:COM MOBILE」「IIJmio」「mineo」の伸びが著しいですが、それぞれどういう魅力があるのでしょうか。

調査担当者 格安スマホは、若年層より40代~50代の中年世代の層が厚いため、そこに力を注いでいます。

「J:COM MOBILE」は、「J:COM TV」や「J:COM NET」などTVや光回線など顧客基盤となるサービスを提供しており、モバイルとセットの契約することでギガが増量される「データ盛り」が好調と聞いています。調査結果でも契約した理由で「光セット割で料金がお得になるから」が高い結果となっています。

「IIJmio」では、「スマホ端末が安く買えるから」とか、「mineo」では独自のコミュニティーサイトがあり、サービス・顧客サポートの満足度が高いなど、それぞれの強みを活かしています。

――ところで、シェアでは7サービスで最下位の「日本通信SIM」が、総合満足度と顧客推奨度で圧倒的1位ですが、どんな点がユーザーの心をひきつけたのでしょうか。

調査担当者 「日本通信SIM」は合理的プランという特徴的なプランを3つ用意しています。なかでも「シンプル290」という1GB 290円という格安のプランが人気です。また、直近で30GBプランを料金据え置きのまま50GBに増量するなど、積極的にお得な料金プランを発表したことが話題になりました。

そういう企業姿勢もあり、料金満足度が非常に高いです。ユーザーの通信料金を安くしたいというニーズに対応する姿勢が、総合満足度や顧客推奨度に表れていると思います。

サブ利用や法人携帯、IoT活用に活路を見出す格安スマホ

――なるほど。それぞれの企業が大手4キャリアに対抗して頑張っているわけですが、格安スマホの今後はどうなりますか。シェア10%の壁を突破できるでしょうか。

調査担当者 楽天モバイルも含め4キャリアが低価格プランを提供しているため、個人のメイン利用のシェアを伸ばすことは高いハードルがあると思います。

ただ、格安スマホは2台目(サブ利用)としての契約や、法人携帯、IoT活用(あらゆるモノをインターネットに接続する技術)など幅広くサービスを提供しており、その分野は成長が見込めています。

通信業界は大手4キャリアで約9割を占める寡占市場ですが、その中でもサービスの増減に注目すると特徴が見えてきます。特に大手3キャリアの本ブランドのシェアが低下し、「楽天モバイル(MNO)」や「Y!モバイル」「UQモバイル」といったサブブランドの増加が顕著です。

通信料金がデフレ化するなか、各社は「ポイ活」とか「マネ活」とか、経済圏に顧客を囲い込むなど、ユーザー1人あたりの収益を上げる「ARPU」(アープ)向上に向けた取り組みを開始しています。次回の調査で変化が起きるか注目しています。

(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)

姉妹サイト