箱根駅伝への出場をかけた予選会で、日大の選手が脱水症状のようにフラフラになりながら走る様子を撮った動画がXで投稿され、その影響を心配する声が出ている。
予選会では、東海大の選手がゴール直前で倒れ、途中棄権となったケースも話題になった。こうした事態は命にも関わるのではないかとして、日大の選手は観客が助けられなかったのかとの指摘も出て、議論になっている。
日大の選手は、仰向けに倒れるとまた立ち上がって...
サングラスを着けた日大の山口月暉(るな)選手(20)は、大勢の観客が声援を送る道路脇近くで、フラフラになって、いきなりしゃがみ込む。
「大丈夫?」「ヤダー!」。山口選手が両手を地面に突いて、仰向けに倒れると、観客とみられる女性の声が響いた。
山口選手は、そのまま路上を横になって動き、再び立ち上がろうとする。
「誰か止めてよ~! 誰か止めてよ~!」
女性から悲鳴が上がったが、沿道の観客は、次々に通る選手らに拍手しながら声援を送るだけだ。
山口選手は、両手を突いて立ち上がると、またフラフラになりながら走り始めた。
「止めてあげてよ~」「頭打ったらダメだから!」
走り出した山口選手だが、フラフラしてまた道路脇で倒れそうになる。それでも耐えて、道路の中央に戻ると、今度は走っている選手らにぶつかりそうになる。
「危ない! 危ない! 危ない! 危ない!」
選手らは、山口選手を間一髪で避けて走り抜けたが、山口選手は、また仰向きに倒れてしまった。そこを別の選手が避けて走っていくところで映像が終わっている。
この間は40秒ほどで、動画は、予選会があった2024年10月19日のうちにXで投稿された。投稿者は、動画の選手は、脱水症状のようになってつらそうだったと報告した。心配な状況だけに、関心を集めて、2000万回以上再生されている。
「お答えできるような検証はできていません」
山口選手の状況については、どのように対処すればよかったのかを巡り、様々な意見が出て、X上で議論になっている。
「意識障害出てそうでヤバいじゃん...」と心配する声が上がり、名札を下げたスタッフらしき人も2、3人見えたため、「これ救護体制どうなってるんだ?! 明らかにドクターストップレベルだろ」と批判された。
また、声援を送っていた観客に対しても、「なんで誰も助けないの?」などと疑問が出て、「関係者がどこにでもいる訳じゃないし、判断するのは観客」「観客が介助してよいってルールをつくるしかない」といった声さえあった。
その一方で、「観客は止めらんないわよこれは。批判するのはお角ちがい」「失格にしてしまう勇気は一般観客には重すぎる」といった指摘も出ていた。
東京都立川市内の陸上自衛隊立川駐屯地を起点にした10月19日の予選会は、ハーフマラソン約21キロのコースで行われた。この日、東京では、統計史上で最も遅い真夏日で、都心は30度に達した。中継した日テレの解説者が「過去最悪のコンディションじゃないかと思います」と明かすほどの過酷な環境だった。
脱水症状などで倒れるアクシデントが相次ぎ、箱根駅伝の公式サイトによると、選手のうち6人が途中棄権した。
山口選手は、最後の1キロを走るのに14分もかかったが、棄権せずに完走していた。その結果、所属する日大は、全体で7位に入って、箱根駅伝への出場が決まった。
山口選手は、自らのインスタグラムでも、当日中に今回のことをストーリー投稿で報告していた。そこでは、次のようにつづっている。
「12キロすぎから意識がなく救急搬送の後、点滴5本打って生き延びました。チーム、関係者、応援してくださった方々にご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。体の回復に努め、元気な姿で箱根路でリベンジできるよう再度頑張ります」
予選会の競技注意事項などによると、役員以外は、コース内立ち入りが禁じられており、選手は、役員以外から助力を受けてはいけない。救急車を呼ぶときは、一刻を争うとき以外は、大会本部などの許可が必要だとされている。
選手が危険な状態だとみられるときに、スタッフや観客がその場の判断で選手を助けたりすることはどうなのか。あるいは、助けられるようにルールを変えることは考えられるのか。
こうした点について、予選会を主催した関東学生陸上競技連盟の事務局は22日、「お答えできるような検証はできていませんし、個別の取材対応はしていません」とJ-CASTニュースの取材に話した。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)