捨てた「ポテチの袋」からサングラス作る アイデア勝負のスタートアップたち【ドバイ・GITEXリポート】

富士フイルムが開発した糖の吸収を抑えるサプリが500円+税で

   中東ドバイで開かれたIT展示会「GITEX」。そのイベントのひとつ「EXPAND NORTH STAR」に集まったクライメート(気候)テック企業について、前回取り上げた

   「EXPAND NORTH STAR」は、テーマごとに10か所のホールに分かれていた。クライメートテック関連のテーマは「未来の惑星」と題され、「ホール7」に集中。公式発表によると、参加したスタートアップなど企業は180社を超え、投資家も100人以上を数えた。

  • クライメートテック企業が集まった「ホール7」
    クライメートテック企業が集まった「ホール7」
  • プレゼンするインドのベンチャー企業「WITUOUT」創業者アニシ・マルパニ氏
    プレゼンするインドのベンチャー企業「WITUOUT」創業者アニシ・マルパニ氏
  • 出展ブースの様子
    出展ブースの様子
  • 資料を使って説明するマルパニ氏
    資料を使って説明するマルパニ氏
  • クライメートテック企業が集まった「ホール7」
  • プレゼンするインドのベンチャー企業「WITUOUT」創業者アニシ・マルパニ氏
  • 出展ブースの様子
  • 資料を使って説明するマルパニ氏

温室効果ガス対策、リチウムイオン電池のリサイクル...

   企業の出展ブースは、何人も入れる大きな部屋から、机1つ分までさまざま。だが広さに関係なく、多くのブースでは訪問者への対応や、展示内容を説明する声が聞こえてきた。

   参加したスタートアップは、世界各地から集まった。地元UAE(アラブ首長国連邦)のクライメートテック企業「Coral」は、企業が排出する温室効果ガスの管理ソフトを開発。排出状況を追跡・分析し、その結果に基づいて、「排出量低減」につながるプランを提案する。

   UAEは2050年までに、温室効果ガスの排出量から吸収・除去量を差し引いてイーブンの状態にする「ネットゼロ」を達成すると、21年に宣言している。ただ企業活動においては、排出量低減に努めるにせよ、全く出さないわけにはいかない。

   Coralではこうした企業に、再生可能エネルギープロジェクトや植林を支援するなどして、排出分をオフセット(相殺)できる提案をする。

   ほかにも、出展企業の事業内容は多様だ。

   廃棄された食料を航空機の燃料に変えるバイオテクノロジー、大気中の二酸化炭素を効率的に回収して厳重に管理貯蔵する技術、太陽光の捕集量を従来比で25%高めたシステムを開発し、効率的な太陽光発電の実現を目指すベンチャー企業、電気自動車に使われるリチウムイオン電池を、独自技術を使ってリサイクル――。

   会場に設けられたステージでは、スタートアップが自社ビジネスをプレゼンテーションする時間もあった。その一つ、インドのベンチャー企業「WITUOUT」の創業者アニシ・マルパニ氏の話を聞いた。

「リサイクル不可能」とされた素材でも活用できる

   プレゼンの冒頭でマルパニ氏は、聴衆にこう問いかけた。

「ポテトチップスの袋はリサイクル不可能とみなされていたことを、皆さんはご存じでしたか」

   袋の材料にはプラスチックやアルミニウムが使われている、と話す。チョコレートの包装紙や牛乳パックを含め「リサイクルできない」とされたこうした入れ物は、役目を終えて捨てられた後のリサイクル率が現状では1%以下にとどまっているという。

   WITUOUTは、これらの廃棄物から、再利用可能な素材を抽出する技術を開発。それを活用したサングラスを製造、販売するまでに至った。

   それにともない、新たな雇用が生まれた。捨てられた袋の収集や、集めた袋の裁断、洗浄といった初期工程の担い手として「ウエイスト・ピッカー」と呼ばれる、ゴミ集積場で金銭になりそうなものを探す人を多く採用したのだ。

   危険で低収入だったウエイスト・ピッカーは、それまでよりずっと高額な給料を安定的に手に出来ている。機械操作をはじめ、手に職をつける機会も得られる。

   マルパニ氏は、「サングラスの生産で、インドや世界の廃棄物管理の問題を解決するわけではない」と冷静だ。一方で、「リサイクル不可能とされた素材から、高品質のサングラスを作れるというコンセプトを提示することはできました」。

   今後、あらゆる廃棄物を高品質な素材に再生させるリサイクルセンターを各地に作ることが目標だ。

チャレンジの熱量は高かった

   WITHOUTのように、ユニークなアイデアで地球規模の問題解決に取り組むスタートアップが、数多く芽吹いている。

   課題は、スケールするまでの持続性だろう。クライメートテックは、一般的なビジネスよりも成長までに時間がかかるモデルだ。

   前回の記事で触れた米投資家のショーン・オサリバン氏は、2024年10月13日のトークセッションで、自身の最初の起業では株式公開で大成功を収めたが、2社目では市場環境の悪化から苦い経験をしたことを明かした。たとえアイデアが優れていても、事業が長続きしない例は少なくない。

   同氏はスタートアップ経営者に向けて、「ベストを尽くし、会社の方向性について投資家と密にコミュニケーションを取ること」の大切さを説く。温暖化をはじめ地球環境の諸問題は、待ったなし。そこにチャレンジするスタートアップの熱量の高さを、GITEX「EXPAND NORTH STAR」では体感できた。

   ◇

   次回は、もう一つのイベント「GITEX GLOBAL」で注目した出展内容をリポートします。

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