河野太郎前デジタル相2024年10月13日、フェイスブックを通じてかつての外務省の地名表記に関するエピソードを振り返った。この地名表記を改めるのに尽力したのが、6月末まで内閣広報官として首相会見の司会を務めていた人物だった。
「ベトナム」は「ヴィエトナム」、「ニュージーランド」は「ニュー・ジーランド」
河野氏は13日、「外務省の経済局長や内閣広報官を歴任した四方敬之さんが、マレーシア大使として赴任します」と四方氏の人事に触れ、「実はこの四方大使、日本の外交の礎を築いた人なんです」とし、四方氏の尽力について明かした。
03年まで、外務省は世の中とかけ離れた地名表記をしていたのだという。
オセアニアの島国「ツバル」を例に挙げ、「マスコミもツバルと書くし、地図にもツバルと書いてあるし、ツバルの名誉総領事館もツバルと書きます。ところがツバルなんて国はない、この国の名前はトゥヴァルだと外務省は言い張っていました」とした。
「ニュージーランド」も同様で、「その国の名前はニュージーランドではない、ニュー・ジーランドだと外務省は言い張っていました」。
「ヨルダン」は「ヨルダン大使館は正式な国名は、ヨルダン・ハシミテ王国だと言います」が、「ヨルダンなんて国はない、この国の名前はジョルダンだと外務省は言い張っていました」と、あくまでも外務省ベースの呼称が優先されてきたという。
「イギリスは連合王国、ノルウェーはノールウェー、ベトナムはヴィエトナム、ロサンゼルスはロス・アンジェルス、ニューヨークはニュー・ヨークなどなど...」と枚挙にいとまがないと振り返り、「国名、都市名などを一般に使われているものにするべきだと何度も訴えても外務省は頑として受け付けず、外務省式を押し通し続けました」とした。
「あらゆる地図でジョルダンという国を見つけることができなかった」
02年に総務大臣政務官となった河野氏は、外務省の在外公館設置法の改正案の稟議が回ってきた際、以下のような理由を挙げ、稟議を否決したという。
「地図でジョルダンという国を探したが、あらゆる地図でジョルダンという国を見つけることができなかった。その他にも存在しない国、都市が散見された。存在しない国や都市に在外公館は不要であるため、この改正案は不要である」
すると、「当時の杉浦正健外務副大臣がすっ飛んで来られて、『国名や都市名を全て改めるから、稟議を通してくれ。』」と、地名の改訂作業に着手することができたのだという。
「その作業を担当し、新聞や雑誌をはじめあらゆるメディアの地名表記を確認して、改訂案を作成したのが、当時の若き四方大使でした」とし、四方氏の改訂案によって改められた地名を並べた。
「ヴィエトナムがベトナムに、トゥヴァルがツバルに、ニュー・ジーランドがニュージーランドに、アルゼンティンがアルゼンチンに、サイプラスがキプロスに、ノールウェーがノルウェーに、連合王国が英国に、ジョルダンがヨルダンに、象牙海岸がコートジボワールに、ヘーグがハーグに、プラーグがプラハに、ワルソーがワルシャワに、タナナリヴがアンタナナリボに、ダレサラムがダルエスサラームに、ロス・アンジェルスがロサンゼルスに、ニュー・ヨークがニューヨークに、イスタンブルがイスタンブールになりました」
「今、外務省が外交に使っている地名表記は、この四方表記です。だから私は四方大使が日本の外交の礎を築いたんだよと言っています」と四方氏の功績を称え、「四方大使のマレイシアじゃなかったマレーシアでの活躍をお祈りします」とジョークを交えてエールを送った。