黒字なのに大幅募集のソニーグループ、リコーの狙い
J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を担当した東京商工リサーチ情報部の本間浩介さんに話を聞いた。
――今の時期に対象人数が昨年同期の4倍、社数も1.5倍に加速している理由はズバリ、何でしょうか? それほど今の日本経済は荒波の真っただ中にあるということでしょうか。民間の新規タンクの調査によると、東証プライム上場企業の今年冬のボーナス予想は過去最高になるとの調査も出ていますが。
本間浩介さん 2024年は製造業、輸出企業を中心に、円安の恩恵や値上げで業績が押し上げられ、最高益をあげる企業が多くみられました。
従来、早期希望退職は不況時に実施する企業が増えますが、コロナ禍を経てこれまでと異なる傾向をみせています。募集実施の理由が、業績悪化よりも経営環境の変化への対応、新規分野への進出に伴う既存分野の縮小、撤退による人員削減などが増えています。
賃金上昇による固定費削減の意味もありますが、黒字企業が約6割を占めることから、業績が好調のうちに構造改革を進める企業が増えています。このため、人員削減が進んでも、今冬のボーナスが過去最高ということは十分考えられます。
――黒字企業が27社で6割を占めるとありますが、具体的に著名な企業を挙げ、なぜ業績が好調なのに早期希望退職を募るのか、背景を説明してください。
本間浩介さん 2024年に黒字で募集を行ったソニーグループは、ゲーム事業を手掛けるソニー・インタラクティブエンタテインメントが、国内外で人員の約8%に及ぶ900名の早期希望退職を実施しました。ゲーム事業はコロナ禍の巣ごもり需要で経営環境は良好でしたが、コロナ禍が一巡し、グループ全体としては変化が大きいゲーム事業は身軽化し、今後の持続的な成長を推し進めていきたいという考えがあるのだと思われます。
複合機事業のリコーは9月に国内外で2000名の募集を発表しました。リコーは黒字ですが、複合機事業はペーパーレス化を背景に市場は縮小傾向にあります。また業績は赤字ですが、同業のコニカミノルタは4月、国内外で2400人の早期希望退職を発表しました。
リコーは東芝テックと複合機事業で業務提携を結び、コニカミノルタは富士フイルムホールディングと複合機の部品調達における業務提携を進めています。このような需要減少による業界再編では、将来性を見越した早期希望退職は避けられないでしょう。