「メンバー」を使う理由は
なぜ容疑者よりも「メンバー」が多数派なのか。
たとえば、読売テレビの元アナウンサー・道浦俊彦さんのブログ「平成ことば事情」の2001年10月2日の記事では、稲垣さんの報道の際に、「逃亡のおそれがないことから『在宅での捜査』に切り替わり釈放」されたとし、その際の記者会見時から報道各局は「メンバー」に切り替えたとしている。
その理由として、「テレビ局内の報道に関する内規に、在宅での捜査の場合の容疑者の呼称については、『実名に肩書き(まれに敬称)をつける。微罪の場合、"匿名"もあり』というふうに決められており、今回はそれに従ったのです」と説明していた。
また、報道各社が手引きとする、共同通信社の記者ハンドブックでは、「任意調べの場合は容疑者を使わない。容疑者と被告は有罪が確定するまで無罪と推定される」と記載されている。一方で、敬称や肩書については、芸能欄の芸能人には敬称を付けないとし、「死亡、事件、事故、善行、訴訟などの場合は呼び捨てとしない」とある。
今回の場合、報道によると斉藤氏は書類送検されたものの逮捕されておらず、「容疑者」を使う事例には該当しないため、ほかに適切な肩書がなく「メンバー」を使ったものとみられる。
なお、過去には書類送検された著名人にも「さん」や「氏」などの敬称が使われている例もあった。例えば、お笑いコンビ「FUJIWARA」藤本敏史さんが23年10月に当て逃げ事故を起こし、24年1月に道路交通法違反で略式起訴された際、斉藤氏を「メンバー」と報じたNHKや日本テレビ、毎日新聞、朝日新聞は「藤本敏史さん」とさん付けで報じている。