かつてなら「失礼な!」とお叱りを受けただろう。
目の前に相手がいるのに、「手持ちぶさただから」とスマホをいじる人が6割に達することが、NTTドコモのモバイル社会研究所(東京都千代田区)が2024年9月19日に発表した「『手持ちぶたさに携帯電話をいじる』人は6割、昨年から3ポイントの微増」でわかった。
手持ちぶさたにスマホをいじる人は、映画館の中で発光、電車内で音を鳴らすなどマナーも悪い。これってスマホ依存ではないのか。調査担当者に聞いた。
手持ちぶさたに使う人、「食事中」「歩行中」のながら利用も多い
モバイル社会研究所では、2015年からスマホ所有者に「面前に相手(家族・友人・知人など)がいるのに、手持ちぶさたにスマホをいじっている」かの調査をしてきた。今回の調査(2024年1月)は、全国15~79歳の男女6305人が対象。
調査開始の2015年では35%だが、その後は年々増加し、2020年以降は50%台後半でほぼ横ばいに。今回の調査では60%となり、昨年から3ポイント増加した【図表1】。
次に、「手持ちぶさたにスマホをいじる」と答えた人を対象に「自身が公衆の面前でスマホを使って行っている行動」との関連を聞いたのが【図表2】だ。これをみると、「手持ちぶさたにスマホをいじる」人は、すべての項目で割合が全体的に上昇していた。
その中で、6割強の人が「食事中」「歩行中」「人ごみの中」でもスマホを使っており、全体の平均に比べ16、17ポイントも高かった。また、「ボタンやゲームの効果音をまわりに聞こえるように鳴らす」「映画館など、暗さが重要な場所で画面から発光させる」といった迷惑行為に関しても8ポイントほど高いことがわかった。
スマホが当たり前の若い世代は、周囲に迷惑をかけている自覚が薄い
J‐CASTニュースBiz編集部は、モバイル社会研究所の調査担当者に話を聞いた。
――2015年からの調査をみると、2015年には35%だったのが2020年に57%まで上昇。その後横ばいになりながら、今回60%に3ポイント増加しました。この傾向をどう評価しますか。横ばい状態(高止まり)のままとみるのか、今後再び上昇に転じるとみるのか。
調査担当者 過去の傾向より高止まり感はありますが、2024年以降再び上昇する可能性はあるかもしれません。
2023年5月にコロナ5類移行によって、コロナ対策の緩和を含む社会変化があり、3ポイント増につながった可能性があります。社会変化がスマホ利用者の行動に影響が出るのか興味深いため、今後継続ウォッチしていきます
――【図表2】では、公衆の面前で行なっている行動の具体的な項目を調べています。携帯電話を机に置く、食事中に使用する、歩きスマホをするなどが6~7割に達します。これらは依存の面で問題はないでしょうか。
調査担当者 これらの行動が習慣化していることと、スマホに依存していることは別だと考えています。しかし、各種行動の置かれている状況にもよりますが、周囲に迷惑をかけたり、事故などにもつながったりする可能性はあります。マナーという面では問題だと思います。
特に、スマホが身の回りにあることが当たり前の若い世代にとっては、周囲に迷惑をかけているという自覚が薄いと考えられ、リスクは高まると考えています。
昭和でも「ながら新聞」はあったが、「歩き新聞」はなかった
――マナーモードにせずに電車に乗る、授業中や会議中に着信をチェックする、映画館でも発光させるなどは明らかに迷惑行為ですよ。こうした行為が2割~4割もあることについてはどう考えていますか。
調査担当者 スマホの「ながら利用」は、周囲に迷惑をかけたり、交通事故などにもつながったりする可能性があります。スマホを利用する際は、周囲の人、場所、状況に配慮し、適切に使っていただきたいです。その意識が社会全体に浸透するよう、今後も本内容に関連する調査リポートを発信し続けていきます。
――ながらスマホや迷惑行為を減らすには、具体的にどういう方法があるのでしょうか。アドバイスがありますか。
調査担当者 マナー違反となるような行動を習慣化させないためには、使用ルール(使用禁止時間帯・場所・目的・状況を決めるなど)を設け、メリハリをつけた利用を意識することが現実的でしょうか。
家族がいれば、お互いに注意し合えるので(実際は親から子供への意識付け)、徹底・定着がしやすいかと思います。
――ところで私は70代ですが、若い人と「ながらスマホ」について話すと、「昭和の時代だって、新聞や雑誌を読みながら食事をする人がいた」「今は、直接相手と目を合わせると気まずい時代だから、相手がいてもスマホをいじるのはおかしくない」という反論がきました。
「歩き新聞はなかったよ」と答えましたが(笑)、こうした意見についてはどう思いますか。
調査担当者 新聞や雑誌がスマホに代わっただけで、昔も今も同じ状況、という見方はたしかにあるかもしれません。
スマホという媒体が小さくどこでも持ち運べて、高機能化によって何でもできるようになったことが、「ながら利用」を助長させる傾向になっているのかもしれません。その点は、昔と今の違いと捉えています。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)