将来不安を考えると「最低限これぐらいあれば、安定して生活できる」水準
――それにしても、初任給の額が応募に影響する割合が年々上昇しています。特に「非常に影響する」と答えた人が3割を超えました。こうした傾向をどう分析しますか。
服部幸佑さん 背景としては、物価高や社会保険料の引き上げ、コロナ禍の景気減退の経験による将来への不安があると考えられます。
また、昨今では売り手市場で人材不足の問題が出てきています。これにより企業も初任給の引き上げを行っているなかで、学生もより条件のよいところへの就職を希望しているのではないかと思います。
――しかし、最低限ほしい初任給の額が年々増加し、「26万円以上」が2年間で2倍以上増え、「25万円以上」が約4人に1人となると、個人的には、「さすがに、ちょっと高望みしすぎでは」と言いたくなります。
新卒採用の初任給アップに人件費をさく分、ミドル層の人件費が減らされる企業が少なくないと聞きます。学生たちはどう考えているのでしょうか。
服部幸佑さん 昨今の物価高やコロナによる将来不安を経験している学生からすると、社会人になった自分自身をイメージした時に「最低限これぐらいあれば、安定して生活できる」と考える基準が高くなってきているのではないかと考えられます。
また、最近の学生は貯蓄や資産形成などお金に関する意識が非常に高いです。マイナビの最新の調査(2024年8月)によると、社会人になった際の投資意欲について、6割以上が前向きに考えており、社会人になったら「将来のために貯蓄する」と答えた人が7割近くに達しました。
将来的にも終身雇用がなくなるといわれているなかで、学生の時から資産形成を視野に入れて、給料で貯金ができる余裕があるのかを考える傾向が強いのではないでしょうか。