健康保険証がマイナンバーカードを基本とする仕組み(マイナ保険証)に移行し、2024年12月2日から現行の健康保険証は新規発行されなくなる。
こうしたマイナ保険証への移行について、働く主婦・主夫層のホンネ調査機関「しゅふJOB総研」(東京都新宿区)が2024年9月12日に発表した「健康保険証廃止に関する意識調査」によると、45%が「反対」で「賛成」の3倍に達した。
なぜ、反対が多いのか。また結局、マイナ保険証が始まるのならどう利用していけばよいのか。専門家に聞いた。
「国の一元管理が心配」VS「1枚でいろいろ使えると便利」
しゅふJOB総研の調査(2024年7月25日~8月1日)は就労志向があり、同居人がいる主婦・主夫層420人が対象。まず、マイナンバーカードを持っているかを聞くと、約8割(79.0%)が「持っている」と答えた。
マイナンバーカードを健康保険証として利用しているかを聞くと、「利用している」人は2割(19.8%)だけ。「利用しておらず、今後も利用しない」と意思表示する人が2割以上(23.8%)いた【図表1】。
健康保険証を廃止しマイナ保険証に移行することをどう思うか聞くと、「賛成」13.3%、「反対」45.0%。「どちらともいえない」41.7%で、「反対」が「賛成」の3倍以上に達した【図表2】。
いったいなぜ、反対が多いのか。フリーコメントから反対の意見をみると――。
「カード1枚に情報がつまりすぎているため、できれば持ち歩きたくない」(40代:パート/アルバイト)
「とにかく情報漏洩が心配。なんにでも紐(ひも)づけられてしまうことが怖い」(30代:派遣社員)
「あらゆるデータを国が管理しすぎていて、怖い」(50代:パート/アルバイト)
「暗証番号入力が面倒。顔認証もあるけど、認証されない時や、子どもの分まで暗証番号を覚えていないといけないのが大変」(30代:今は働いていない)
「保険証は保険証で利用できるほうがありがたく、子どもに持たせることを考えても、ほかの機能がある物をもたせるのはリスクがある」(40代:今は働いていない)
このように、セキュリティーの問題や、国による一元管理を心配する声が多かった。
一方、賛成の意見をみると――。
「公的なことに、すべて紐づけてほしい」(50代:今は働いていない)
「1枚でいろいろ使えると便利です」(60代:パート/アルバイト)
「クレジットカードとして利用するのは、普及が難しい点もあると思う。銀行口座の紐づけが必ずともなうので、ポイントカードとして使うことから浸透させるのがいいと思う」(60代:パート/アルバイト)
やはり、1枚で活動範囲が広がる利便性を強調する声が多かった。
日ごろからマイナンバーカードを持ち歩くことの不安
J-CASTニュースBiz編集部は、研究顧問として同調査を行い、雇用労働問題に詳しいワークスタイル研究家の川上敬太郎さんに話を聞いた。
――マイナンバーカードを持っている人が約8割、しかし、マイナンバーカードを健康保険証として利用している人は約2割という調査結果ですが、どう評価していますか。
川上敬太郎さん マイナンバーカードを所持している人だけに絞っても、マイナ保険証を利用しているのは25%に留まります。12月2日から基本的にマイナ保険証へと移行されることを考えると、期日まで半年を切った時点での比率としては少ないように感じます。
――健康保険証を廃止し、マイナ保険証に移行することに「反対」が「賛成」の3倍以上です。これほど「反対」が多いのはなぜだと思いますか。
川上敬太郎さん 反対の声があることは認識していましたが、その多さを改めて実感しました。便利になることを歓迎する声もありますが、それ以上にマイナンバーカードのセキュリティーに対する不安の声が大きいようです。
またマイナ保険証になれば、多くの人が日ごろからマイナンバーカードを持ち歩くことになります。そのことへの不安や、そもそもマイナンバーカードにさまざまな個人情報が紐づけられることで、国に管理される状況が強化されることを懸念する声も聞かれます。
子どもが多い家庭では、1枚ずつのマイナ保険証の管理が大変
――フリーコメント欄には、賛否両論さまざまな意見が出ていますが、川上さんはどのコメントが印象に残りましたか。
川上敬太郎さん 「顔認証もあるけど、認証されない時や、子どもの分まで暗証番号を覚えていないといけないのが大変」という声です。お子さんが小さいうちは、子どもの分も含めて親がマイナンバーカードを管理することになります。
お子さんが複数いらっしゃる家庭もあります。仮に3人お子さんがいらっしゃれば、自分の分も含めて4人分のマイナンバーカードを管理することになります。
風邪をひくと、家族の中で感染することがよくありますから、子ども全員を医者に連れていくことはありえます。その際、もし顔認証が上手くできないときには暗証番号を控えておくか、スマホに健康保険証の情報が記載されたPDFファイルを保存する事前措置を行っておく必要があります。
スマホに慣れていないお年寄りなど、戸惑われる方がいそうです。人によってマイナ保険証の利用に伴う手間や大変さが変わってくることに、配慮することが大切だと改めて感じます。
デジタル庁のウェブサイトを見て、情報収集をしては
――運転免許証とマイナンバーカードを一体化させる「マイナ免許証」の運用も来年(2025年)3月に始まる見通しです。マイナンバーカード1本化は避けられない動きですが、川上さんは、ズバリ、どう進めるべきだと考えていますか。
川上敬太郎さん マイナンバーカードの活用範囲として広げてほしいことを聞くと、「運転免許証として利用」と回答した人は16.7%だけでした。一方で最も多かったのは「広げてほしいものはない」で34.5%。マイナンバーカードの活用自体に消極的な人が多い様子がうかがえます。
すでに国として推進している施策ですし、さまざまな情報が1つのカードに紐づけば便利であることは間違いありません。しかし、不安を感じている人が多い状況を踏まえると、国民の理解を得る取り組みにもっと注力する必要があるのではないでしょうか。
――今回の調査で、特に強調しておきたいことがありますか。
川上敬太郎さん もしマイナンバーカードを紛失した場合は、一時利用停止を24時間365日フリーダイヤル「0120-95-0178」で受け付けている旨がデジタル庁ウェブサイトのQ&Aに記されています。しかし、これらの情報を把握していない方もたくさんいらっしゃると思います。
マイナ保険証に反対の声が圧倒的に多いものの、「どちらともいえない」という回答も4割を超えました。実情がよくわからないもどかしさがあると思いますが、日々の生活に関わるだけに、一度デジタル庁のウェブサイトなどをのぞいて情報収集をしていただければと思います。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)