パート女性の大問題、社会保険加入拡大で「扶養枠」「年収の壁」どうなる? メリット・デメリットに応じた働き方とは

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それぞれの異なる事情に、できる限り寄り添いながら改革を

――フリーコメントでは、さまざまな意見が出ていますね。川上さんはどのコメントが響きましたか。

川上敬太郎さん 「結果的に私たちにメリットがあるのかわからない」というコメントが、実情を如実に表しているように感じます。社会保険加入によるメリットとデメリットがわかりづらいだけでなく、働き損が発生する年収の壁の種類が複数あるなど、何をどこまですればよいのか、どう振る舞えばよいのかの加減がわかりにくいのではないでしょうか。

社会保険の適用拡大について、単に政府が保険料をたくさん徴収できるようにするための施策だと受けとっている人もいます。複雑すぎる制度をシンプルにすることと、社会保険加入のメリットとデメリットを誰もが理解しやすくなるよう丁寧に周知する必要があると思います。

――政府内には、2025年以降に社会保険制度の適用範囲を完全撤廃する案が出ています。川上さんは、ズバリ、この問題をどうすべきだと考えていますか。

川上敬太郎さん 調査では、「撤廃したほうがいい」という意見が「撤廃しないほうがいい」という意見の2倍でした。ただ、6割近くの人が「どちらとも言えない」と回答しています。いまの制度のあり方でよいのかよくわからず、答えようがない人が多いと感じます。

働き損の発生を回避すべく応急措置として「年収の壁・支援強化パッケージ」が行われていますが、複雑な制度にさらにルールを加えたため、より複雑になってしまっている面があります。

2025年に行われる予定の年金改革で、シンプルな制度へと改める必要があると思います。そして、社会保険制度は既に人々の生活や人生設計の中にガッチリ組み込まれているだけに、すぐに変えることと数十年単位の長いスパンで変えていくこととを整理して対応していく必要があるのではないでしょうか。

――今回の調査で、特に強調しておきたいことがありますか。

川上敬太郎さん そもそも、扶養枠自体に対する意見が分かれています。不公平感を抱く人もいれば、絶対に扶養枠をなくしてほしくない人もいます。また、家庭の制約を受けながらもフルタイムで働いて税金や社会保険費用を支払っている人もいれば、体調やご家庭の事情で働きたくても働けない人もいます。

それら意見の違いや、置かれている状況が個々に異なることを踏まえると、誰もがスッキリと納得する制度にすることは不可能だと感じます。しかし、いまの社会保険制度に改善の余地があることは間違いありません。

社会全体にとって最適な制度へと改善しつつ、個々に異なる事情に対してはできる限り寄り添いながら、今後のあり方について丁寧に説明していくことが大切なのではないでしょうか。

(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)

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