「早期リタイア」を希望する20~30代男性が急増している。理由の第一は「働くことが好きでないから」とか。
50~55歳までに会社を辞め、資産運用などで稼いで、好きなことをして生きたいという。それが実現できればうらやましいが、大丈夫なのか?
若者の間に広がる「早期リタイア」の動きをリポートにまとめたパーソル総合研究所の金本麻里さんに話を聞いた。
投資マネー利用の早期リタイアは、人手不足を加速させる
<「仕事が好きでない」早期リタイア希望20~30代男性急増 「投資で稼いで好きな生き方したい」と言うが...大丈夫?(1)>の続きです。
――バブル崩壊後は、仕事にやりがいを求める時代は終わったということでしょうか。
金本麻里さん バブルが崩壊してからの「失われた30年」で、働くことに対する意識が大きく変わっています。今の若者にとって「お金のため」に働くことは、決しておかしな考え方ではありません。むしろ、仕事に「やりがい」や「生きがい」を強調することは、ブラック企業によくある「やりがい搾取」か、という批判の対象になりかねません。
近年(2015年)の国際比較の意識調査でも、日本の就業者は欧米などに比べ、仕事に「自分の生活のため」「お金のため」以上の意味を見出す割合が低いという結果が出ています。
――どうしてそうなったのでしょうか。
金本麻里さん 背景には、バブル崩壊後に企業と従業員の関係性が変化し、企業が終身雇用と年功序列を保証する代わりに大きな権限をふるうということがなくなり、「企業が自分の面倒を見てくれない」という意識が強くなっていることがあげられます。「キャリア自律」が求められるなか、具体的なキャリアを描けない若者も多いと言われます。
企業が若手の成長やキャリア形成にフルコミットしなくなり、若者も仕事にフルコミットしなくなったとも言えます。調査結果からは、「成長実感」がない20代は、早期リタイアを求める傾向が強い傾向もあります。
――う~む、困ったことですね。私のようなシニア世代は「元気なうちは働き続けたい」「働いて社会と関わりをもっていたい」という意識が非常に強いです。実際、「生涯現役で働きたい」シニアが増えているのに、若者が「早期リタイアしたい」と、真逆のことを望んで日本はどうなるのでしょうか。
金本麻里さん ご指摘のとおり、構造的な人手不足社会はすぐそこまで来ています。生活に必要不可欠なインフラを支える労働力そのものが足りなくなるなかで、投資マネーを用いた「早期リタイア」が増えることは時代に逆行しています。この傾向が続けば問題が大きくなるでしょう。
社会や企業は、自分なりの成長やキャリアを築こうとする若者を応援してほしい。1人でも多くの若者が仕事を楽しみ、仕事に価値を見出し大成していけるようにすることがとても重要です。