9候補を擁して盛り上がりを見せる自民党総裁選。ここに突如飛び出したのが「労働市場改革」という論点だ。その趣旨は、日本経済の生産性向上や賃上げを進めるために必要な政策とのことである。
SNSでは「首切り自由化か」などと反発が相次いでいるが、働く人にとって本当に不利なものになるのだろうか。総裁選の議論をまとめるとともに、企業の実務担当者の意見を聞いた。
小泉氏「人員整理が認められにくい状況を変える」
きっかけは2024年9月6日、小泉進次郎氏が出馬表明時に「(整理解雇の)4要件が満たされないと人員整理が認められにくい状況を変えていく」と述べたことだ。
整理解雇とは、いわゆるリストラのこと。会社都合で行うリストラは「人員削減の必要性」「解雇回避努力」「人員選定の合理性」「解雇手続の相当性」があるのか、裁判所が厳格に判断する判例が確立されている。
これを見直すと、企業はリストラをしやすくなる。これにはSNSやマスコミで反発が起こり、小泉氏は13日の「自民党総裁選2024」で「解雇の自由化を言う人は私を含め誰もいない」と批判に配慮しつつ、「このままでは正規、非正規の格差の解消是正につながらない」と問題提起を続けている。
大手企業の人事部に勤めるAさんはYouTubeで共同記者会見を見て、小泉氏の表現はうまくなかったとしつつ、着眼点は悪くないのでもっと自信を積極的に押していった方がよかった、と感じたという。
「新聞やテレビが『解雇規制緩和』『解雇自由化』とあおるのはミスリードですね。日本の解雇規制は先進国の中でも比較的厳しくないとされ、国際的な調査でもそのような結果が出ている。しかし実態は『実質的に解雇できない状況』になっているというのが、企業実務の見方です」
Aさんは、もしも日本の解雇規制が本当に厳しくないのならば「セカンドキャリア支援室などという名の『追い出し部屋』なんか無理に作る必要がない」と指摘し、「解雇できないからハラスメントみたいなことをやらざるを得ないんじゃないですか」と表情を曇らせる。