出馬表明で「一番得した人」は...まさかの不出馬!? 「SNS映え」だけで論評すると意外な結果に【自民党総裁選】

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   自民党の総裁選(2024年9月12日告示、27日投開票)がスタートした。

   史上最多の候補者9人と混戦の今回は、そのぶん戦い方も多種多様になっている。

   投票できるのは自民党員に限られるが、どれだけ一般国民に「新しい顔」が浸透するかが、その後の国政を左右するとあって、各陣営そして党本部も、機運醸成へと躍起になっている。

   裏金問題を背景に「カネのかからない選挙」が望まれる選挙とあって、とくに「いかにネットにウケるか」がカギを握る。

   そこで、ネットニュースの記者経験と、地方選挙への出馬歴のある筆者の視点から、「ネット世論と自民党総裁選」をテーマに、あれこれと論じてみたい。

  • 自民党総裁選、候補者が共同記者会見(写真:代表撮影/AP/アフロ)
    自民党総裁選、候補者が共同記者会見(写真:代表撮影/AP/アフロ)
  • 自民党総裁選、候補者が共同記者会見(写真:代表撮影/AP/アフロ)

「知的レベル」質問をあしらった進次郎氏

   初回は、出馬表明から正式な立候補までの「事前準備」について考えたい。あの候補者は認知度アップにつながったのか、それとも埋没してしまったのか--。政策や実力を抜きに、ただひたすら「SNS映え」の観点から、見ていこう。

   今回の総裁選で、大きなキーワードになっているのは「刷新感」だ。

   一般的には派閥政治が裏金問題の温床になったとの見方が強く、いかに政治構造を打破できそうな人物かに、もっとも評価軸が置かれているように見える。

   その観点から、「ネットで一番ウケた人」を見渡すと、やはり小泉進次郎元環境相(43)が頭一つ抜けている。

   表明会見では、フリー記者による「知的レベルの低さで恥をかくのでは」との指摘に、「これから『あいつマシになったな』と思っていただけるようにしたい」などと返答し、ネット上では「株を上げた」と好印象につながった。

   これまで表に出る政治家は、礼を失しているような「質問」を投げかけられた時、露骨に不快な態度を示すケースが多かった。しかし小泉氏は、相手の名前を繰り返し呼びながら、とことん対話する姿勢を見せている。

貧乏くじを引いたのは「一番乗り」のエリート

   記者と小泉氏の問答は、SNSで大きく拡散され、質問者の名前がXでトレンド入りした。SNSユーザーは、権力に批判的な面を持つ一方、「報道と称せば何を言っても許されるのか」といった違和感を抱えていることも珍しくない。

   小泉氏は、天性なのか、帝王学なのか、独学なのか、のらりくらりとすり抜けて、プラス評価につなげた。

   世間が「進次郎構文には意味があるのかも」と感じるなかで、目新しさを欠いたのが、「コバホーク」こと小林鷹之・前経済安保相(49)だろう。

   小泉氏よりも年長ながら、当選年次としては1期下。しかも世襲ではない。閣僚経験は少ないが、東大法学部からハーバード大ケネディ行政大学院を経て、元財務官僚に......というピカピカな経歴から、実務能力を期待する人もいるはずだ。

   おそらく小林陣営は、いち早く出馬表明することで、本選が始まるまでに知名度を高めようとする考えだったのだろうが、小泉会見で一気に持っていかれてしまった。

石破氏は「長年のイメージ」で存在感

   おそらく他の候補者もそうだろう。父親譲りの華やかさを持つ進次郎氏を前に、存在感を示せる政治家は、なかなかいない。

   その点で、華やかさではなく、おどろおどろしさ(当然ながら、褒め言葉だ)でアピールするのが、石破茂元幹事長(67)。

   何を考えているか、一見するとわからない。しかし、旧態依然とする現状を変えるのは、それくらいの人物でないとダメだと感じる節もある。

   しかしそれは、「太田総理」(日本テレビ系で2006?10年に放送された「太田光の私が総理大臣になったら...秘書田中。」)あたりから、下野時代もふくめて長年培ってきたイメージだ。出馬表明からの3週間弱で、新たに築いたものではない。

岸田政権の閣僚は「新たなイメージ」まだ不足

   岸田文雄首相(67)の政権を支えた面々は、軒並み「現政権での責任」を拭えていない。

   前回2021年の総裁選で岸田氏と対決した河野太郎デジタル相(61)や高市早苗経済安保相(63)。それから、参院から衆院へくら替えした林芳正官房長官(63)、元法相としても知られる上川陽子外相(71)、そして、派閥領袖でもあった茂木敏充幹事長(68)は、いまのところ新機軸を打ち出せていない。

   第2次岸田改造内閣で厚労相を務めた加藤勝信元官房長官(68)も、まだ存在感が薄い。筆者はSNSとの親和性は高いと思うのだが、そのあたりは別の機会に論じたい。

   ここまで9人全てに触れた。だが、「総裁選までの準備期間」に絞ってみると、一番知名度を上げたのは候補者ではなく、最終的に出馬断念した齋藤健経産相(65)に思える。

   小泉氏と当選同期ながら、農水相、法相、経産相と閣僚を歴任する齋藤氏は、ABEMAやYouTubeの人気チャンネル「ReHacQ」など動画コンテンツに出演し、ときにはユーモアをまじえながら、政策を語った。

   こうした動画コンテンツは、とくに若年層への認知を広げる。会見で一方的に話すよりも、MCや共演者と会話した方が、当然ながら人柄は伝わりやすい。

   今回はスタートラインに立てなかったが、新政権の閣僚人事や、その次をねらう意味として、「さえない候補者」よりも、強い存在感を示したと言えるだろう。



【プロフィール】
城戸 譲(きど・ゆずる)
ネットメディア研究家 コラムニスト

1988年生まれ。2013年ジェイ・キャスト入社後、Jタウンネット編集長、J-CASTニュース副編集長などを経て、22年に独立。東京都杉並区出身で、23年の同区議選に落選。「炎上ウォッチャー」としての執筆をメインに、政治経済からエンタメまで、幅広くネットウォッチしている。

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