高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ 兵庫・斎藤元彦知事が辞任しないのは「元総務官僚」だから...後任「脱官僚」なら石丸伸二氏?

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   兵庫県の斎藤元彦知事をめぐっては、知事のパワハラやおねだり体質などが告発され、県職員など複数の県関係者が亡くなっている。

   これだけの事実からわかるのは、斎藤知事は一部の県職員から相当に嫌われていたのだろう。そして、複数関係者が亡くなっていることから、告発内容は相当な真実であろうと思いがちだ。嫌いな上司を告発するのはわかるとして、嫌いな人がのうのうと生きていながら、自分が死ぬのはあまりに不合理だから、余程のことだろうと一般の人は思う。

  • 兵庫県議会調査特別委員会(百条委員会)で答弁する斎藤元彦知事(画僧は兵庫県議会の配信動画から)
    兵庫県議会調査特別委員会(百条委員会)で答弁する斎藤元彦知事(画僧は兵庫県議会の配信動画から)
  • 東京都知事選に出馬した石丸伸二氏(2024年6月撮影)
    東京都知事選に出馬した石丸伸二氏(2024年6月撮影)
  • 兵庫県議会調査特別委員会(百条委員会)で答弁する斎藤元彦知事(画僧は兵庫県議会の配信動画から)
  • 東京都知事選に出馬した石丸伸二氏(2024年6月撮影)

初手のミス、知事はミスとは思っていない

   ただ、県議会の調査特別委員会(百条委員会)を聞いていても、パワハラやおねだりは県職員へのアンケートに基づくもので、客観的・決定的といえるものは乏しい。知事は、怪文書に屈しなかった快挙と思っているはずだ。漏れ聞くところによれば、知事は天下りに厳しく対処して職員に恨まれ怪文書を撒かれたが、毅然と対処したので、悪いところはないという。

   ここで浮かび上がるのは、公益通報に対する知事側の初手のミスだ。知事は、告発文を見たとき、悪質な怪文書と受け取った。だから職員のパソコンを調べて懲戒処分した。第三者に委ねるべきところをしなかったというミスだ。もっとも、知事はそれをミスと思っていない。

   こうした事情を筆者なりにみると、知事が元総務官僚だからと思う。筆者の関与した事例は、ふるさと納税だ。これは税収が減り、その使い道を国民(寄付者)が選択できるので、税金差配する官僚を中抜きにするものだ。当然中抜きにされる総務官僚は猛反対だった。当初は、返礼品に関する規制はなく、返礼品支出は財政支出なので、総務省が規制するのではなく、各自治体の責任と判断で行うという仕切りだった。ところが、総務省はわざわざ法改正して規制権限を手に入れた。しかし、その後、その規制権限をめぐる訴訟では、最高裁で国が敗訴している。それでもいまだに規制を続けている。

知事は「スーパーパワー」、官僚としては究極ポスト

   官僚をしていると、法の執行者に過ぎないが、法案を起案し立法府より上、司法判断も無視でき、万能感がでてくる。

   官僚のトップで公選された知事はスーパーパワーで、官僚としては究極ポストだ。同じく国の行政トップの首相は一人しかできないが、形式的には国と地方政府は対等で47都道府県のトップはポストも多い。実際、47都道府県のうち官僚出身知事は23もあり、そのうち10は総務官僚出身者で、そのうちの一人は斎藤知事だ。

   この万能感がいまだに知事に固執しているのだろう。

   兵庫県知事は、1962年から16期63年間、総務官僚出身の知事だ。いまだに現知事は辞める気配はないが、その後任となれば、脱官僚になるだろう。その中には、石丸伸二氏の名前も浮上しているようだ。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長 1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。21年に辞職。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「国民はこうして騙される」(徳間書店)、「マスコミと官僚の『無知』と『悪意』」(産経新聞出版)など。

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